微生物が支えている、私たちの水資源
水資源の浄化に活躍する微生物
私たちは、普段使用している水の9割を河川から得ています。各家庭の水道での利用のほか、農業用水、飲料の生産や工業用部品の洗浄水など、その用途はさまざまです。河川の水には、流れ込む土砂や枯れ葉、家庭や工場からの排水、あるいは魚のふんなど、多くの有機物が混ざり込むため、川をきれいに保つにはそれらの浄化が必要です。そこで活躍するのが微生物たちです。
微生物を遺伝子配列から分析する
水の中には、多くの微生物がすんでいます。川の上流の水源近くの水には、1ミリリットル当たり10個の微生物がいますが、下流の水になると、1ミリリットル当たり100万個に増えます。また、川の中の石などの表面には、バイオフィルムと呼ばれるぬるっとした層が付着しています。その層を採取して調べると、1グラム当たり1億個から10億個もの微生物が見つかります。
バイオフィルムなどから微生物を採取して、遺伝子配列を分析すると、その水域にはどのような特徴を備えた微生物がすんでいるのか、詳しく調べることができます。例えば、アンモニアによる汚染が激しい水域では、高濃度のアンモニアを速やかに分解するのが得意な微生物が多く見つかり、それほどアンモニアが多くない水域ではアンモニアを低濃度に保つことが得意な微生物が多いといったことです。自分のえさにできる物質が多いところに、その種の微生物は集まるのです。
ユニークな微生物の活躍に期待
有機物やアンモニアなどの分解が得意な微生物をうまく活用すると、水資源の浄化をより効果的に進めることが可能になります。ある水域で特定の微生物を増やす際には、その微生物に適した酸素と水の環境を整え、必要な栄養分を足し、それでも足りなければその微生物自体を投入する、という方法が用いられています。
将来的には、下水道の臭いを抑制する働きを持つ微生物や、堆肥が発酵する臭いを抑制する微生物など、さまざまな場所でユニークな微生物が活躍することが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
新潟食料農業大学 食料産業学部 食料産業学科 アグリコース 准教授 浅野 亮樹 先生
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