超高齢社会を健康にするブルーベリーの葉を生み出した「育種」

葉から見つかった宝物
日本では、健康長寿を助ける機能性食品の開発が注目されています。その一環として、約1,800種類もの植物の実や茎、葉が調査されました。その結果、ブルーベリーの葉に含まれるプロアントシアニジンというポリフェノールの一種が高い抗酸化作用を持ち、ウイルス抑制効果や血圧低下などの機能性を持つ可能性が明らかになりました。果実よりも葉に含まれる成分の方が、高い機能性を持っていたのです。
技術を組み合わせて人気商品に
より機能性を高めるために、世界で最も高いプロアントシアニジン含有量を持つブルーベリー品種「くにさと35号」が開発されました。この品種は葉の収穫専用に栽培されており、お茶のように密集して栽培されています。収穫にはお茶用の機械を利用し、宮崎県の伝統製法「釜炒り茶」の技術を応用して加工することで、成分を損なわずに高品質なブルーベリー葉茶が完成します。現在では年間約100トンの葉が収穫され、お茶のほかに、のどあめなどとしても商品化されており、健康を意識する多くの人に支持されています。
植物育種がつくる未来の食
こうした成果を支えているのが「育種」という技術です。育種とは、植物の品種を交配によって改良し、新しい性質を持つ品種を生み出すことです。ブルーベリーは「6倍体」と呼ばれる複雑な遺伝構造を持っており、最新の遺伝子編集技術を使うのが難しい作物です。そのため、昔ながらの地道な交配と選抜を何年も繰り返すことで、「くにさと35号」は生まれました。
このような育種の力は、健康だけでなく、食料生産の未来にも関わっています。地球温暖化による気温上昇や、病害虫の増加、塩害などの「環境ストレス」に強い作物を育てることが、これからの世界でますます重要になります。高温環境に強い米や、塩分の多い土地でも育つ小麦などが、すでに研究されています。植物の可能性を引き出して、人々の健康と未来の食を支える育種は、私たちの生活にとって欠かせない技術なのです。
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先生情報 / 大学情報

宮崎大学農学部 農学科 動植物資源生命科学コース 教授(学部長)國武 久登 先生
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遺伝育種科学、園芸科学先生が目指すSDGs
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