マイクロプラスチックは有害物質の運び屋か

マイクロプラスチックは有害物質の運び屋か

海洋での環境汚染

海洋にプラスチックが流出している問題は、広く認識されています。プラスチックを飲み込んだり餌と間違えて食べたりした生物は、最悪の場合は栄養失調で死に至ります。影響はそれだけではなく、微細なプラスチック粒子(マイクロプラスチック)が有害物質を生物の体内に運び入れる経路になっている可能性が指摘されています。プラスチックは化学物質を吸着しやすい特性があり、実際に海で採取されたマイクロプラスチックから有機フッ素化合物などが検出されています。有機フッ素化合物は、かつては泡消火剤やフッ素加工のフライパンなどの工業製品に使われていましたが、生物への有害性が明らかになり、近年では製造と使用が制限されている物質です。

魚類への影響を分析

有機フッ素化合物は分解されにくく、体内に取り込まれるとタンパク質などと結合して蓄積します。人体への蓄積も報告されており、魚類を含めた食品から2次的に人体に入る場合も考えられます。そこで、有機フッ素化合物の一種であるPFOSが魚類に及ぼす影響を解明するため、ヒラメを対象にした投与実験を行い、肝臓や筋肉などの各器官の蓄積状況が調査されています。加えて、PFOSが取り込まれて影響を受ける分子の、遺伝子発現レベルでの分析が進められています。PFOSが結合した体内のタンパク質は、本来の役割を果たせなくなる可能性があります。これらのタンパク質にはどのような役割があり、役割が阻害されることで体内にどのような変化が生じるかを明らかにすることが重要です。

将来に向けて

魚類の場合、PFOSは体表の粘液からも排出されることが知られています。この排出のメカニズムの解明も重要です。この排出を助ける薬剤を開発できれば、有機フッ素化合物による汚染が進んだ地域の魚でも、一定期間だけ薬剤を投与することで、再び安全な食品として利用できるようになります。これらの研究は、生態系の健全性を取り戻すとともに、人の健康を守る上でも大変重要なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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新潟食料農業大学 食料産業学部 食料産業学科 フードコース 講師 佐藤根 妃奈 先生

新潟食料農業大学 食料産業学部 食料産業学科 フードコース 講師 佐藤根 妃奈 先生

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水産生物環境学、水産化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

環境問題というと、すぐに何かが起きるような怖いことに思えるかもしれません。過度にあおり立てるようなメディアの記事に惑わされずに、現状にはどのような問題があるのかを自分で把握して、正しく怖がることが大切です。その上で、マイクロプラスチックのような環境問題を、自分とは遠い世界のことだと捉えずに、自分の生活の延長線上にあると考えましょう。あなたが行う日々の身近な努力によって、汚染された環境を変えていくことができるはずです。そういった視点を日常的に持ってもらいたいです。

新潟食料農業大学に関心を持ったあなたは

“Farm to Table to Farm”は「農場から食卓へ、そして農場へ」という意味です。食物は、農場で生産されてから多くの人の手を経て食卓に届けられ、この流れを「フードチェーン」とよび、農場から人々の食卓まで、フードチェーン全体をつかさどる産業を食料産業とよんでいます。本学では、新しい食料産業を作り出すために不可欠な科学(サイエンス)、技術(テクノロジー)、経済活動(ビジネス)を一体的に身につけます。日本の農業を変え、さらに世界をリードする新しい食料産業をともに生み出していきましょう。