病気をもつ子どもの「成長発達」を支援していく看護のあり方
考えるべき「移行期」の小児医療
小児看護の世界で、現在研究が進みつつある分野として、「移行期支援」があります。移行期とは、子どもが成長し、その人らしく大人になる過程のことです。その過程の中で病気をもつ子どもは、病気の理解を深めたり、療養行動を獲得したりするなどさまざまな課題があり、それをどのような看護で支援すべきかが小児看護の課題となります。
移行期における3つの移行
移行期には、大きく分けて3つの移行があります。ひとつは、「診療の場の移行」です。大人の診療科と違い、小児科における治療や看護においては、成長し発達していく子どもが対象であるということが、大きな意味を持ちます。特に、子どもの患者は、15歳くらいになると小児科から大人の診療科に「転科」することになり、担当医師も替わります。子どもや家族からすると、「パートナーが替わる」という重要な問題です。もう1つは、「意思決定をする人の移行」です。幼児期においては、治療方針などを本人ではなく家族に判断してもらうことがありますが、成長するにつれて、本人への説明と意思確認を行うようになっていきます。もう1つ、「療養行動の移行」もあります。子どもが自律・自立していくにつれて、自分でできることが増えていき、健康状態も自己管理ができるようになっていきます。
思春期の看護の多様さ
「乳児期」「幼児期」「学童期」の看護のあり方についてはこれまでも研究されてきましたが、「思春期」については今まであまり研究対象とされませんでした。
小児科の場合、医師や看護師は患者だけでなくその家族とも向き合っていくことになりますが、思春期になると患者本人と1対1で向き合うことが多くなり、従来の小児科の考え方とはまた違ったアプローチが求められるようになります。乳児期、幼児期、学童期、思春期と、発達段階に応じて必要とされる看護のあり方は変わっていくのです。特に思春期は、自分らしさや夢を模索している時期のため、その人らしく大人になるための移行期支援が重要な課題となるのです。
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先生情報 / 大学情報
埼玉県立大学 保健医療福祉学部 看護学科 准教授 櫻井 育穂 先生
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