経験で学ぶ看護と、見える化で学ぶ看護
患者が安心する手の使い方とは
ベテランと新人とで大きく差の出る看護技術が、患者への「触れ方」です。例えば寝返りを助けるとき、患者が安心して体を預けられるよう、看護師には「この部分をこのタイミングで支える」といった技術が必要です。そのため新人看護師はベテラン看護師の動作を見て学び、技術を体得します。難しいのが、体や頭を支えるときの手のひらや指の使い方といった、見えにくい技術の指導です。そこで、看護師の指にかかる圧力を測り、その数値をグラフにして見える化する研究・分析が行われています。手本となるベテラン看護師の数値をあらかじめ計測しておき、新人看護師はその数値に近づけるように手の使い方を練習するのです。
看護技術を習得する方法
慣れない看護師は手のひらがうまく使えず、中指や人さし指などの指先に圧が集中しがちだということがわかっています。指の圧を計測しながらの練習では、グラフに出る数値で自分の手の圧をリアルタイムで確認し修正しながら練習できるので、素早くコツをつかめます。一方、圧を計測せず、これまで通りの練習を行った看護師は、コツをつかむスピードは遅いものの、自身の手の感覚に集中できます。つまり患者のピクッという反応を敏感に感じ取り、どうすれば緊張を解いてリラックスさせられるか想像しながらの練習になるのです。看護師のこうした患者への反応と手の感覚はとても大切です。2つの方法を併用すれば、数値の可視化と感覚とで、患者に寄り添った看護技術を、スピード感をもって習得することが期待できます。
求められる看護の可視化
看護で大切なのは、患者にとって良いことを一番に考えることです。いまや団塊の世代が70歳代になり、今後、自宅での介護はさらに増えると予想されます。介護する家族にとっても、介助する際のポイントや、体を拭くときに心地よいと感じる適切なタオルの温度といった数値は、良いガイドラインになります。科学的看護の戦略の一つとして、看護の可視化は今後さらに求められるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
北海道医療大学 看護福祉学部 看護学科 准教授 明野 伸次 先生
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