歩いて暮らせるまちづくりを!

歩いて暮らせるまちづくりを!

ICT技術でわかる歩道の問題点

日本の都市部では障害者がスムーズに移動できる空間・道づくりが整いつつあり、これらを原因とした転倒や交通事故につながるような状況はほぼなくなってきました。そんな中で求められているのは、利便性とわかりやすさのある移動です。駅にエスカレーターやエレベーターがあっても使い勝手が悪く、かなりの遠回りを強いられることもあるからです。そこで、最近では国土交通省が作成した3次元点群データといったICT技術を活用して、問題点の議論が行われています。写真ではわかりにくい道路や施設の形状を3次元で多角的にとらえることが可能で、何回も繰り返し確認できることも利点です。

段差はない方がいいのか

歩道を作る上で大事なのは、さまざまな人の視点に立つことです。例えば「段差はない方がいい」と考えられがちですが、完全になくすと視覚障害者はその境界を判別できなくなります。かと言って段差があると、高齢者が転倒しやすくなります。実際に高齢者の歩行中の転倒による被害者は増えています。
また忘れてはならないのが、まちのデザインとの両立です。歩道の整備に力を入れすぎて、建造物や道路の価値を損ねてしまうことは好ましくありません。特に歴史的なまち並みが残る場所では、移動の円滑性とデザインの両立が大切です。

まちおこしに歩道を活用

今までは人や物を効率的に運ぶことに重点を置かれていましたが、超高齢社会となった今、「歩いて暮らせる」まちづくり、充実した歩行空間が地域の価値を上げていくことにつながります。例えば国土交通省は「ほこみち」というプロジェクトを立ち上げて、既存の道路をイベントスペースや商店にする取り組みを進めています。ただし、もともと神社の表参道であったような道路であれば歩道の幅も広く、そうした取り組みを行いやすいのですが、車道を中心に作られていた地域では難しいところがあります。まちおこしの観点からも、今後は商店街と連携しながら歩道を整備していく地域が増えていくことでしょう。

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日本大学 理工学部 交通システム工学科 教授 江守 央 先生

日本大学 理工学部 交通システム工学科 教授 江守 央 先生

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交通工学、土木計画学、空間情報工学

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メッセージ

実は道路は表面から水を吸います。大きな道路では水を地中に通すための隙間が作られているものもあり、豪雨対策や道路下の土の保全、タイヤの接地面が少なくなることでの騒音の防止に役立っているのです。同様の仕組みが使われている歩道もあり、滑りにくい効果もあります。このように身近なところに目を向けると、日頃の生活を支えているさまざまな発見があるはずです。自動運転や超高齢社会による歩行者の増加など、交通のモードが変化して行く中でどういう道を作るべきなのか。気づいたことをまちづくりに役立ててください。

先生への質問

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