絶滅の危機に直面しているモグラがいる
小型哺乳類の絶滅危惧種は40%
絶滅のおそれのある動植物を載せた各都道府県の『レッドデータブック』を見ると、意外なことがわかります。クマなどの大型哺乳類が絶滅危惧種に指定されている割合は全体の20%程度ですが、モグラやネズミ、コウモリの仲間などの小型の哺乳類は約40%に絶滅のおそれがあるのです。
エチゴモグラに迫る危機
エチゴモグラは新潟県の固有種ですが、徐々に減少しています。同じ場所に種の違うモグラは普通共存できないのですが、近縁種のアズマモグラが増えて、エチゴモグラが圧迫されているのです。エチゴモグラの繁殖は年1回ですが、アズマモグラでは年2回で、回数の力で次第に圧倒しているのです。しかし、アズマモグラはほかの地域では通常、年1回の繁殖なのです。なぜこの地域だけが年2回なのか、その原因はまだわかっていません。
アズマモグラは現在では東日本を中心に分布していますが、数十万年間は日本全国に生息していました。しかし、体の大きいコウベモグラが西から進出してきたために、アズマモグラは九州ではすでに絶滅し、西日本では地域ごとにわずかに残っているのが現状です。これらの地域で、将来的にはコウベモグラがアズマモグラをさらに駆逐し、アズマモグラが減っていくのではないかと心配されます。
センカクモグラ-生態系が崩れて、絶滅の危機に
尖閣諸島の魚釣島にいるセンカクモグラは、絶滅の危機に直面しています。その原因はヤギです。島外から連れてこられたヤギが野生化し、島の植物に著しい食害を及ぼし、生態系が崩れてしまっています。植物が少なくなると昆虫やミミズも減り、センカクモグラの食べ物がなくなってしまうので絶滅の危機に陥っているのです。現状では政府に許可を得てヤギを取り除く以外に絶滅を避ける手段がありません。同じような状況だった小笠原諸島はヤギが取り除かれたので、生態系が徐々に回復しつつあります。センカクモグラが生育できるためには、本来の食物連鎖が保たれていて、自然があるべき姿を維持している環境が必要なのです。
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先生情報 / 大学情報
富山大学 理学部 自然環境科学科 教授 横畑 泰志 先生
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