栄養満点! 酒かすのスイーツやチーズはいかが?

栄養満点! 酒かすのスイーツやチーズはいかが?

酒かすが地域産業を救う?

酒の製造過程でできる酒かすは、白米の栄養素と酵母と麹菌による発酵で得られたビタミンやアミノ酸を豊富に含んだ栄養価の高い食材ですが、清酒の搾りかすとして二束三文で売られているのが現状です。この酒かすの有効な利用法が模索されています。酒かすに付加価値をつけることができれば酒造会社の利益が増えて、それがより良い酒造りに還元されるという好循環を生み出します。また米作り農家の振興や、ひいては神事にも関わりの深い清酒という日本文化の継承にもつながります。
こうしたコンセプトのもと、酒かすを乳酸発酵させた加工品「さかすけ(R)」が開発されました。さかすけ(R)はいわば「米のヨーグルト」で栄養価が高く、動物実験ではアレルギー性鼻炎の抑制やメタボ解消といった機能性が示されています。

さらに発酵させた酒かすチーズ

さかすけ(R)を使ったアイスクリームやシュークリームなどの商品が開発されていますが、酒かすの消費量を増やすためには、さかすけ(R)そのものを食べるような加工品が望まれます。そこで取り組まれているのが、酒かすから作るチーズの開発です。乳酸発酵させた酒かすを、カマンベールチーズやブルーチーズのカビでさらに発酵させてチーズのような加工品を作るのです。なかなか難易度が高く、チーズ作りに適した乳酸菌の選定から、カビの生育にちょうどよい乳酸発酵の度合いや水分量などを見いだす研究が進められています。

まったく新しい酒にも挑戦

清酒産業への貢献として、酒そのものの研究も行われています。現在国内では約1,200の酒造会社があり、原料に大きな違いはありませんが、1社1社の酒の味は違います。職人の経験にもとづいて造られている味の違いを科学的に検証できれば、思い通りの風味の設計や、製造の安定化が可能です。
伝統を守る一方で、日本酒をベースにこれまでにない菌や副原料を加えて機能性を持たせた酒や、バニラの香りの酒、見た目にも美しい虹色の酒など、まったく新しい酒の開発も目標とされています。

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先生情報 / 大学情報

新潟食料農業大学 食料産業学部 食料産業学科 フードコース 教授 金桶 光起 先生

新潟食料農業大学 食料産業学部 食料産業学科 フードコース 教授 金桶 光起 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

応用微生物学、醸造学

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メッセージ

何かについて不思議だなと思ったら、それで終わらせずに、どうしてなのか調べてみるところまで進めましょう。それが研究のスタートで、自分がアクションを起こせば、難しそうなことでも何とかなっていくものです。棚からぼたもちということわざがありますが、研究においては自分が動かなければ何も落ちてきません。興味を持ったことに突き進んではじめて、知識や人の出会いなどが得られるのです。何を得られるかは自分のそれまでの積み重ねで変わってくるので、自分をしっかり磨いておいてほしいです。

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“Farm to Table to Farm”は「農場から食卓へ、そして農場へ」という意味です。食物は、農場で生産されてから多くの人の手を経て食卓に届けられ、この流れを「フードチェーン」とよび、農場から人々の食卓まで、フードチェーン全体をつかさどる産業を食料産業とよんでいます。本学では、新しい食料産業を作り出すために不可欠な科学(サイエンス)、技術(テクノロジー)、経済活動(ビジネス)を一体的に身につけます。日本の農業を変え、さらに世界をリードする新しい食料産業をともに生み出していきましょう。