時間が足りない! 原子核解明の計算をやり遂げるために
原子核から元素の起源を紐解く
私達の身の回りの物質は原子からなりますが、その原子の質量の99%以上を占めるのが、陽子や中性子で構成される原子核です。元素周期表で、水素が1番、鉄が26番などと振られた番号は陽子の数を表しており、番号が大きくなるほど元素の質量も増えます。身の回りにある重い元素の多くは、宇宙の中で、まず中性子が多い不安定な原子核を作ってから、中性子を陽子に変換するなどしながら、安定して存在できる原子核へと姿を変えてきたことがわかっています。もし原子核の成り立ちが詳しくわかれば、元素の起源を探ることができます。
パズルのピースをどう分析する?
原子核は宇宙の元素構成を理解するためのパズルのピースだといえますが、それぞれのピースの形、つまり性質自体がよくわかっていないものもたくさんあります。そんな難しいパズルを解くために、原子核物理の実験や理論計算が行われています。様々な数の陽子や中性子を持つ原子核を加速器を使って実際に作ってみたり、陽子や中性子の数がとても多い原子核の構造を計算で求めたりするのです。ただしあるひとつの原子核の構造を調べたい場合、10の23乗個のような膨大なパターンを考えなければなりません。たとえスーパーコンピュータを使っても、解き終わるまでには宇宙の寿命ほどの長い時間が必要になることもあります。
複雑な計算を簡単に
そこで、現実的な時間内で計算を終わらせるための工夫として、データサイエンスの手法を導入したアルゴリズムの改良も行われています。例えば機械学習と呼ばれる、AIにも用いられる技術や、応用数学など他の研究分野のアイデアを原子核物理と組み合わせたり、世界中の研究者らがアイデアを交わしながら、特定の原子核の性質を求めるための理論計算を高速化する試みがなされています。このように難しい計算を簡単にして精度の高い結果を得られれば、一般的なコンピュータでも理論計算が可能になり研究がさらに発展するはずです。
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先生情報 / 大学情報
宇都宮大学 データサイエンス経営学部 データサイエンス経営学科 准教授 吉田 聡太 先生
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原子核物理学、データサイエンス先生が目指すSDGs
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