農産物を作っても売れない? 生産者に求められる新たな視点
作るだけでは売れない?
食料が不足していた時代は、農産物は作れば作るほど売れていましたが、海外からの輸入量増加や人口減少などが進んだことで、国内の農産物はただ作るだけでは売れなくなりました。そのため生産者には新たに「どうすれば売れるのか」という農業経営や販売に関する視点が求められるようになっています。所得向上のために期待されている手段のひとつが、農業の6次産業化です。加工や消費者への販売など、生産以外の面も生産者が包括的に行い、手取りを増やすのです。
産直ECの普及
例えばインターネット上で農産物やその加工品を売り買いできる「産直EC」の活用です。生産者が商品を梱包(こんぽう)して直接消費者に発送するため、生産者への分配額が大きくなります。特に新型コロナウイルスが流行した2020年前後は、産直ECの市場規模が大きく成長しました。産直EC普及の背景を探ろうと、利用者のSNS投稿を使ってデータ分析が行われました。その結果、産直ECに参入する生産者が増えて商品の多様化が進んだことや、送料無料キャンペーンや「生産者を応援したい」などの気持ちがきっかけで、サイトを利用する消費者が増えたことがわかりました。
生産者の負担を解消するには?
ただし産直ECは、生産者の負担になる側面もあります。そのひとつが送料です。農産物は鮮度を保つために温度を低く管理しなければいけなったり、重量やサイズが大きいものがあり、送料が商品の価格を上回ることもあります。また、包装や写真によっても売れ行きが左右されるため、従来の農業生産にはなかったスキルも必要です。
こうした課題を解決しようと、宇都宮市などの自治体では、産直ECに必要なスキルや知識を教える講習会や、送料の一部補助など売上を伸ばしやすい環境整備に取り組んでいます。さらに生産者や消費者の思考から産直ECにおける効果的な販売戦略を考えようと、さらなるデータ分析が行われています。
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