いろいろな技術の合わせ技で害虫を管理する
人類の歴史は害虫とのたたかいの歴史
害虫とは、人間の生活に害を与える虫の総称です。農耕によって食料を得てきた日本人にとって、農作物を食い荒らす害虫はとても身近な脅威です。江戸時代に起きた享保の大飢饉は、主にウンカ類の大発生による農業被害が原因でした。日本で本格的に化学農薬が使用されるようになったのは第二次世界大戦後です。初めはDDTやパラチオンといった殺虫剤が使用され、戦後の食糧難の克服に貢献しましたが、食品中の残留や薬害などの問題から使用が禁止され、現在は残留性や毒性の低い薬剤が使われています。
IPMによる害虫防除と化学的防除の問題点
現在、害虫防除において総合的害虫管理(IPM)の重要性が高まっています。IPMは、化学農薬を使う化学的防除、天敵昆虫などを使う生物的防除、防虫ネットなどを使う物理的防除、抵抗性品種の開発などの耕種的防除をうまく組み合わせて、害虫を経済的な被害のないレベルに維持することを目的としています。
通常IPMの中心は化学的防除ですが、害虫に同じ殺虫剤を使い続けると、その薬剤に対して抵抗性を発達させた害虫が現れます。そうなると新たに効果のある殺虫剤を開発しなければなりませんが、殺虫剤の開発には10年以上の年月と100億円規模のお金が必要となります。
害虫防除に不可欠な殺虫剤抵抗性の遺伝子解析
殺虫剤抵抗性は、害虫体内での薬剤の解毒分解や遺伝子変異などによる感受性の低下によって生じます。殺虫剤抵抗性を発達させないためには、その仕組み(メカニズム)を調べ、害虫の遺伝的な特性を明らかにする必要があります。それによって効果の高い殺虫剤が分かるだけでなく、使用した際の防除効果も予測できるようになります。効果的な殺虫剤が見つからない場合は、化学的防除以外の手段を中心とする防除体系に切り替えることもあります。殺虫剤抵抗性に関する遺伝子解析は、害虫防除の根幹を支える重要な基礎研究なのです。
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先生情報 / 大学情報
宇都宮大学 農学部 生物資源科学科 教授 園田 昌司 先生
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