未知の言葉、消滅しそうな言葉を記録に残す、言語学の役割

未知の言葉、消滅しそうな言葉を記録に残す、言語学の役割

同じ国でも会話が通じない

世界にはまだ人類に知られていない言語がたくさんあります。例えばインドネシアには500から700の言語があり、その中にはよく知られていない言語もたくさん存在します。インドネシアで話されている数多くの言語は大まかにはオーストロネシア語族とパプア語族に分類されます。共通語であるインドネシア語もありますが、東部にはインドネシア語を話さない人も多くいます。日本でも、東北方言話者と鹿児島方言話者の間では会話がうまくいかないことがありますが、インドネシアではそうした言語間の違いが極めて大きく、同じ国の人同士なのに意思疎通ができないケースもあるのです。

聞き取りからすべてを明らかにしていく

まだ知られていない言語の全貌を明らかにするには「言語学」の立場から言語がどういう仕組みで成り立っているかを考えます。未知の言語には辞書がなく、文字がない場合はその言語で書かれた書物も存在しません。そのため研究の過程では、まず聞き取り調査を行ってその言語の語彙(ごい)をなるべくたくさん収集します。そうして集めた膨大な語彙を記録・分析し、どんな発音があり、どんな音が重要な役割を果たすのかを突き止めていきます。また、どんな語順で文や文章が成り立っているのか、あるいはどんな品詞が存在するのかといったことも、一つ一つ明らかにしていきます。

言語学の役割とロマン

明らかにされた研究成果は、その言語の辞書をつくるために役立てられます。インドネシアには、少数言語という、このままではいずれ話す人がいなくなってしまうであろう言語も存在するため、消滅する前に記録を残すことには大きな意義があると言えます。
未知の言語はインドネシアだけでなく、パプアニューギニアなどにも存在します。そうした場所に足を踏み入れて、一つ一つ調査し、人類が共有できるように記録・記述していくことは言語学者の大切な使命の一つです。同時にまだ発見されていない宝を探すような、知的好奇心をかき立てる魅力も秘めているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

南山大学 外国語学部 アジア学科 教授 稲垣 和也 先生

南山大学 外国語学部 アジア学科 教授 稲垣 和也 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

言語学、外国語学、アジア地域研究

先生が目指すSDGs

メッセージ

若い頃はもっている情報量が比較的少なく、見えている世界が狭いことに気づかない。こういうこともしばしばあります。私はそうでした。しかし、自分が全然知らない世界のことについて勉強し、情報を集めはじめると、みるみる視野が広がっていき、社会人にとって不可欠ともいえる「バランス感覚」が身についていきます。特に、言語にはまだまだわかっていないことが多く、「異質なものに触れる」という経験ができます。ぜひ大学に進み、言語を通じてそうした経験をなるべくたくさんしてほしいと願っています。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

南山大学に関心を持ったあなたは

南山大学は、人文学部、外国語学部、経済学部、経営学部、法学部、総合政策学部、理工学部、国際教養学部の全8学部18学科を擁する、中部地区を含む西日本唯一のカトリック総合大学です。海外からの留学生も多く、国際性豊かなキャンパスです。
多くの卒業生が製造業や金融業、流通業など、世界規模・全国規模の企業で生き生きと活躍しています。また、外国語運用能力と国際感覚を生かし、航空関連や外国企業などの国際舞台で活躍する卒業生も多数。こうした卒業生のネットワークを生かしたキャリアサポートも万全です。