何気ない一言が悪口に? 言葉の善悪が見えてくる言語哲学
善悪を考察する「言語哲学」
普段、何気なく使っている言葉が、意図せず人を傷つけたり、不適切だと評価されることがあります。ではなぜ、そうしたことが起こるのでしょうか。言葉のメカニズムを科学的に分析する「言語学」に「哲学」を加えることで、言葉の善悪や意味、価値判断が可能になります。「なぜこれは良くて、あれはダメなのか」「悪口はなぜ悪いのか」「人を傷つけるとはどういうことか」といった根本的な考察ができるのが「言語哲学」です。
社会に影響を与えるメカニズム
言葉は社会的な影響力を持ちます。たとえば、ステレオタイプや偏見を表す一般化があります。「クジラは肺呼吸をする」は、例外なくすべてのクジラが肺呼吸をする、ということを伝えます。一方、「ライオンは人を噛む」だと、そんなことはありません。世界にいるほとんどのライオンは人を噛まずに生きています。では、「高校生は遊んでばっかり」はどちらでしょうか。例外なく高校生はみんな遊んでいる、などと考えるのは偏見ですが、この文を否定できるでしょうか。人を噛むライオンが少しでもいれば、「ライオンは人を噛む」と言えるわけですから、遊んでばっかりな高校生が少しでもいたら、この文は正当化されるのでしょうか。言語哲学ではこうした表現などを検討します。
ネットの言語チェックに貢献
デジタル社会となった今、ネット上には攻撃的な言葉やヘイトスピーチ、フェイクニュースやプロパガンダがあふれています。ネットいじめなども身近な問題です。AI技術を用いて、そうした問題のある言語表現に対応していこうという研究が始まっています。どこまでが許容され、どこまで許容されないのか考えないといけないため、哲学・倫理学研究者と、コンピューターサイエンティストが一緒になってそうした課題に取り組んでいます。
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先生情報 / 大学情報
南山大学 人文学部 人類文化学科 准教授 和泉 悠 先生
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