家事はだれが担うのか 日本における「女中」の歴史と課題

家事はだれが担うのか 日本における「女中」の歴史と課題

住み込みの「女中」

かつて日本では、住み込みで家事労働を担う「女中」が多く働いていました。特に戦前は、都市中間層のサラリーマン家庭でも、住み込みの「女中」が、専業主婦とともに家事労働を行っていました。しかし、1950年代以降は減少し、現在では一般家庭での住み込みの家事労働者はほとんど見られません。家事労働者以外の職業への就業機会が増えたことや、高校進学率の上昇によるなり手不足も大きな要因です。

女性の「社会進出」を支える

1950年代以降は、「女中」とともに行っていた家事労働を主婦が一手に担うことになりました。しかし、女性の雇用労働者化が進む今、家事労働の分担の再考が求められています。外国では、現在でもベビーシッターや、メイドのような家事労働者が女性の「社会進出」を支えています。国際間の経済格差により外国人労働者が家事労働を担うケースも多く、日本でも介護職で外国人労働者の雇用が増えており、また家事労働者の「受け入れ」も行われはじめています。世界的にみて、家事労働者の待遇は不安定かつ悪い状況にあり、2011年には国際労働機関(ILO)が家事労働者の権利保護の条約を採択していますが、日本は批准していません。

家事使用人は「労働者」ではない

日本のもう一つの問題は、家政婦などの「家事使用人」は、労働基準法で労働者として認められていないという点です。最近の裁判で、高齢者のいる家庭に1週間泊まり込みで介護と家事労働に従事した女性が死亡したのは過労死に当たるかが争われました。判決では、労働基準法上の労働者として認められるのは1日4時間半の介護労働のみであり、残りの家事労働部分は適用外とされて過労死と認定されませんでした。一方で、厚生労働省はこの問題についての実態調査を実施、労働基準法の見直しの検討も打ち出しています。今後、女性の就労や少子高齢化が進む中で家事労働のアウトソーシングがより増えることが考えられ、家事労働に対する課題解決は非常に重要な課題です。

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南山大学 人文学部 日本文化学科 教授 坂井 博美 先生

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日本近現代史、ジェンダー史

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メッセージ

常識や当たり前と思われることも、さかのぼってみると実は歴史は浅いということがあります。現在の状況がどのような背景で形成されたのかを知ることによって、広い視野で柔軟に事象を理解できるようになるのがジェンダー史を研究する意味だと考えています。歴史を振り返りながら、現在の課題についても往復して考えていくことで、相互の関心の視点を高めていくことができる学問です。日本の中のさまざまな課題にジェンダーがどのような影響を与えてきたのかを、一緒に解き明かしていきましょう。

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