家事ロボットに必要なのは、精度よりも器用さ

家事ロボットに必要なのは、精度よりも器用さ

家事ロボットに必要な性能とは?

現段階で最もロボットが活躍しているところと言えば、工場が挙げられます。しかし同じノウハウで造ったロボットに家事をさせようとしても、うまくいかないでしょう。工場で必要なのは精度とスピードですが、家事においてはどちらもさほど重要ではありません。また、人間は針の穴に糸を通すのにも苦労するくらい精度の低い動きしかできない半面、紙を自在に折る、本のページをめくるといった、器用さに長けています。家事の中で求められるのは、その器用さと安全性なのです。

家の中はデータベース化できない

工場は限られた部品しか扱いませんが、家庭では家中のものをデータベース化しても、すぐに新しい物が増えます。そうなるとロボットはデータに頼ることなく、知らないものにも対処できなければなりません。未知の物の情報を集める手段としては、カメラを通した画像情報が思い当たりますが、画像だけでは凹凸の判断がつきませんし、物を扱う情報として不十分な点がたくさんあります。そこで必要になるのが触覚です。人間もそうですが、触ってみて初めてわかることがあります。同じようにロボットも視覚に頼り過ぎることなく、ほかの感覚器官からも情報を取得させるほうが望ましいのです。

ロボットは「猫の手」

室内を自動走行する掃除機のように、家電製品のコンピュータ化は確実に進んでいます。食器洗い機や洗濯機も、ひと昔前とは見違えるような性能になりました。さらに次世代の製品としては、洗濯物をたたむロボットが開発されています。ただし、これはすべての物に言えることですが、人間より上手にできることに価値を見出すのは大間違いです。ロボットはどんなにゆっくりでも、人間が休んでいる間に仕事をしてくれます。そのメリットを最大限に生かし、「猫の手も借りたい」の「猫の手」的な使い方をすればいいのです。せっかく開発されても使われないのが一番の問題で、実際に使ってもらわなければ改良点も見つかりませんし、いつまで経っても高性能な製品は生まれません。

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東京農工大学 工学部 機械システム工学科 教授 水内 郁夫 先生

東京農工大学 工学部 機械システム工学科 教授 水内 郁夫 先生

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ロボット工学

メッセージ

ロボットを開発するにはさまざまな分野の専門家となり、広くて深い知識を持っていることが要求されます。そのためには勉強はもちろんのこと、日常のどんなことにも興味を持ち、どういう仕組みなのかを自分の頭で考える習慣をつけてほしいと思います。そしてもし答えらしきものが見つかっても、それでよしとせずに本当に正しいのかどうか、問い続けることをやめないでください。実際の研究ではひとつ答えが見つかったとしても、すぐに新しい問いにぶつかります。そうしたことに備えるためにも、常に疑問を感じ、考える訓練が必要なのです。

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東京農工大学は、自由な発想に基づく教育研究を通し、社会や自然環境と調和した科学技術の進展に貢献し、それを担う人材を育成します。民間機関等と行う大型の共同研究数は全国の大学で第一位です。MORE SENSEを基本理念とし、果すべき役割の大きさ、重さの自覚の上で農学と工学との協働をさらに進展させ、本学の特色を生かした教育、研究、社会貢献、国際貢献を一層前進させるための努力を続けていきます。