これからの病院の仕組みづくりは、国際看護の視点から
不可欠となる国際看護
もし、あなたが海外で病院に行かなければならない時、言葉や文化の違いがあることで不安や心配が出てくるでしょう。そうした違いが医療格差につながらないように、他国の文化や習慣への理解を深めることも国際看護の大切な要素のひとつです。日本の医療現場においても、外国人定住者や旅行者が増えたことで外国人の受診者は増え続けています。今、看護師には外国人をケアする国際看護の観点は欠かせなくなっています。
日本の病院で起きていること
実際に、病院では多言語表示をするといった工夫はしていますが、まだ対応は十分ではありません。例えば、「アジア系の患者さんの子どもの頭をなでたら大変な騒ぎになった」、「病状の説明を、家族や友人などが通訳した」、「手術前に飲んではいけないと説明した薬を飲んでいた」といった事例は、数多く報告されています。
看護師は患者に寄り添うことはもちろん、医療事故を防ぐことも重要な役割です。しかし、こうした事例に看護師だけで対応することには限界があり、看護師への教育体制も整っていません。
国際看護から病院づくりを
移民が多いアメリカの病院では、文化や言語の違いによる医療格差を解消し患者の権利を守る視点から、政府による全米の病院に向けたガイドラインがあります。病院の看護部門は、看護ケアの提供だけでなく、患者サービスのマネジメントにも責任をもっています。日本でも医療現場で起きている事例を検証して、現場に則したガイドラインがあれば、看護師も安心して業務に専念できるようになるでしょう。例えば「病院の理念に異文化に対する理解、ケアは含まれているか」、「通訳には資格認定された通訳者を用いているか」といったガイドラインを手掛かりに、病院は国際化をめざすことができます。現場では、相手に寄り添い、言葉や異文化に配慮しつつ看護できる教育システムも適切に整えることができるでしょう。それが、世界のすべての人々に医療を提供する、日本のグローバルヘルスの実践につながるのです。
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先生情報 / 大学情報
姫路大学 看護学部 教授 野地 有子 先生
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