講義No.13977 看護学

「爪切り」という日常的な行為から考える、看護師の役割

「爪切り」という日常的な行為から考える、看護師の役割

糖尿病患者の足のケア

現代の日本では、糖尿病の患者数が増加する一方です。糖尿病の治療においては食事療法や運動療法、あるいは薬の使用といった自己管理が大切であり、その中には足のケアも含まれます。
糖尿病では、合併症として神経障害が起こり、足の感覚が鈍くなることがあります。極端な場合は、釘を踏んでも気づかなかったり、爪が伸びて爪が皮膚に刺さっていても気づかないこともあります。さらに血流障害を併発している場合はその傷の治りが遅くなり、治療が長期化したり、ひどい時には切断に至ることもあります。また、一般の人より白癬(はくせん=水虫)を患う人も多く、そうなれば足のケアは一層難しくなります。

現場の課題

こうした糖尿病患者の爪のケアを行うのは看護師ですが、以前、患者の爪を看護師が切った際にけがが起こり、傷害罪に問われるという事件が発生して以来、看護師による爪切りを控える病院が増えています。あるアンケート調査では、ほとんどの看護師が看護学校などで患者の爪の切り方を教わった経験がなく、自分の爪を切る感覚で患者の爪を切っていることがわかりました。深く切るのか浅く切るのか、角を残すのか丸く切るのか、といった看護師自身の好みを患者に適用する形になっており、患者から嫌がられたり、けがにつながったりするケースもあります。

療養上の世話

看護には、「診療の補助」と、洗髪や食事の介助、そして爪切りを含む「療養上の世話」という役割があります。洗髪や食事、爪切りは日常的に行う行為ですが、いざそれを患者に行おうとすれば勝手が変わるため、専門的な技能が求められます。特に伸びすぎた爪や変形した爪、糖尿病患者の爪に対しては、看護師によるケアが必要とされています。医療現場における爪切りの実態を明らかにして、爪の状態や特徴に合わせた適切な切り方やタイミング、手入れなどを理論化して医療現場に還元していくことも、看護学の重要な役割なのです。

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秀明大学 看護学部 看護学科 准教授 大野 美千代 先生

秀明大学 看護学部 看護学科 准教授 大野 美千代 先生

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基礎看護学

メッセージ

能登半島の地震で被災した人たちに、看護師による「足浴」という足のケアが行われ、体だけでなく、傷ついた心も癒やされた、という報道がありました。看護師は医療現場の中でさまざまな役割を担っていますが、足浴だけでなく「看護ならでは」の役割は、近年着実に広がりつつあります。また、医療機関だけでなく、学校や保育園、一般企業、地域と、看護師の活躍する舞台も広がっています。発展を続ける看護の役割や働きに興味があるなら、ぜひ私たちとともに学び、看護の世界で活躍する仲間になりましょう。

秀明大学に関心を持ったあなたは

秀明大学の看護学部は、大学地元、八千代市の強い要請を受けて設立されました。千葉県内から約50%、関東圏外から約30%の学生が入学し、看護職として地域に貢献するという熱い思いをもって学修に励んでいます。校訓「知・技・心」を常に意識して講義・演習・実習に取り組み、少人数の学修での意見交換から学びを深め、拡大しています。充実した学内設備と近隣の実習施設を有し、看護師、保健師(定員20名)の国家試験受験資格を得ることがで、国家試験対策、就職支援、担任制による丁寧なサポートが学生の高い満足度を得ています。