マイクロサイズのカプセルで閉じ込めた新素材

マイクロサイズで世の中を支える!
便利な材料として使われているプラスチックは、有機分子が鎖のように長くつながった「高分子」からできています。この鎖が数百から数千本、毛糸玉のように絡み合った球体が直径数マイクロメートルの「高分子微粒子」です。肉眼では見えないものの、さまざまな製品に使われて社会を支えている縁の下の力持ちです。
カプセル状、円盤状、棒状、球の表面に凸凹を付けたものなど、粒の形を変えることで、さまざまな新しい機能を生み出せるのが特徴です。コスメにも使われており、光の散乱を抑える形の微粒子により、肌が白っぽくならない製品ができています。
「中空構造」で画期的な素材を
その中でも、カプセル状の高分子微粒子は、中にいろいろな物質を閉じ込めることができます。薬効成分や香料などのカプセル粒子では、高分子の殻を水に溶けやすく作ったり、ゆっくりと中の成分を放出させるようにしたりと、用途に応じて設計することができます。
中が空っぽ(=空気)のカプセル粒子も大活躍します。空気は絶縁性や断熱性に優れた物質なのです。最近では、世界で初めての、中空構造を持ったポリイミド微粒子の量産技術が開発されました。もともと耐熱性や強度に優れているポリイミドというプラスチックを中空微粒子にすることで、さらに高い絶縁性や軽量化が可能になり、特に情報通信機器に有用な素材として期待されています。
技術のカギは「外側から」
カプセル粒子を作るのは難しい技術でした。それを可能にしたのは、合成の段階で外側から固まるようにすることで、中に目的のものを閉じ込めていくという製法です。分子を鎖状につなげる「重合」というプロセスで、中に閉じ込める物質を同時に入れておくと、その物質の周りで重合していき、鎖同士が絡まって球を作りながら、物質を閉じ込めていくのです。
今後も、中に入れる物質をさまざまに変えることで、新しい素材の開発が行われていきます。また、環境に優しい植物由来の材質で、高分子微粒子を作る研究も始まっています。
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神戸大学工学部 工学研究科 助教鈴木 登代子 先生
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