ウイルスは賢い! ウイルスと宿主の攻防から生命の神秘に迫る
私たちの身体に潜伏しているウイルス
新型コロナウイルスによって一般に知られるようになりましたが、ウイルスは生き残るために次々と自身の遺伝子を変異させます。ウイルスは、感染する宿主がいないと生きていけません。なので宿主を死なせないように、弱毒化したといわれています。
ウイルスには、最終的に我々の体内から消滅してしまうものもあれば、体内に潜伏して生涯を私たちとともに生きるウイルスもあります。後者の一つがヘルペスウイルスです。子どものころに感染し、水ぼうそうや突発性発疹を引き起こし、多くのヒトが体内にヘルペスウイルスを持っています。
ウイルス感染の仕組みの解明が治療や予防に
ヘルペスウイルスには、帯状疱疹(ほうしん)を引き起こすものや、口のまわりにできる口唇ヘルペスを引き起こすものなど、さまざまな種類があります。免疫機能が低下すると、潜伏していたウイルスが再活性化して、時には死に至ることもあります。このウイルスは、どのように再活性化するかといった、メカニズムが不明でした。
ウイルスが体内に侵入する時、最初に結合する細胞分子(受容体)があります。ヒトヘルペスウイルス6Bの受容体は、活性化したT細胞にある分子であることが発見されました。これにより、発症のプロセスが解明されつつあり、予防法や治療法の道すじが見えてきつつあります。
生命の不思議に満ちた研究
ウイルスは頭脳がないのに賢く、どうにかして生き残ろうとします。ヘルペスウイルスがずっと私たちの体内に潜伏感染しているのも、子孫を残し、生き続けるためでしょう。もしかしたら、ほかにも何かしらの役割を果たしているのかもしれず、まだ多くの謎が残されています。
そして、宿主の私たちは、侵入あるいは再活性化したウイルスを退治するために免疫系を稼働させます。ウイルスと宿主との攻防です。ウイルスに関する研究は、医療現場に役立つことはもちろん、こうした生命現象や自然の神秘に迫る研究といえます。
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