文学のデジタル分析で新発見! 文学を考え、文学で考える

文学のデジタル分析で新発見! 文学を考え、文学で考える

文学研究もデジタル化?

近年、国立国会図書館に所蔵されている、200万点を超える図書資料や雑誌などの本文がデジタル化されました。もちろん文学作品もここに含まれます。文学作品が、AIなどを活用して分析できる時代になってきたのです。コンピュータを活用すると、これまで文学研究で検証してきたことと、相当異なる側面も見えてきます。
例えば松尾芭蕉の俳句の影響を考えるとき、今までなら正岡子規や芥川龍之介といった著名人の作品と比較検証がなされたりしてきました。それが、コンピュータを用いてデジタル本文を解析すれば、膨大な量の作品と松尾芭蕉の俳句との関係性を検証できます。

デジタル本文と情報技術が文学研究を変える

また「明治時代は写実主義が主流である」など、これまで文学史は純文学を中心に語られてきました。デジタルで明治時代に出版された小説を分類すると、探偵小説、戦争小説、家庭小説、歴史小説の割合も多かったことがわかります。
文字のデータ化が進んでいる英語圏では、デジタル本文を用いた文学研究がさかんになりつつあります。今、急速に日本語の文字データ化が進んでおり、AIの技術もまた急速に進んでいます。Chat-GPTを始めとした大規模言語モデルを活用すると、さらに多様な検証ができるようになるでしょう。

従来の文学研究とデジタルの交差点

ただ、文学の研究を単にデジタル化すればいいわけではありません。これまでと同様に、文学の表現を「精読する=丁寧に読み込む」ことも大切です。その上で、従来の手法とデジタル化をどう組み合わせていくかといった新しい視点や手法が求められています。
その先には、デジタルと文学と社会をつなげて考えるという、さらに広い展開が待っています。
文学は、社会とつながっています。たとえば、海外に住む日本人の小説や、日本に住む外国人による小説を検証すると、人の移動や移民社会の実態を読み解くことができます。コンピュータを利用した大規模なテキストの解析が、今後はここにさらに交差していくでしょう。

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先生情報 / 大学情報

名古屋大学 文学部  教授 日比 嘉高 先生

名古屋大学 文学部 教授 日比 嘉高 先生

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近代日本文学、出版文化史

メッセージ

私は、考古学を学ぶために大学に進学し、紆余曲折あった後、小説のおもしろさに出会って文学の道に進みました。そして文学を研究し続けていた私が今、コンピュータを使いながら作品の分析をしています。人生、何が必要になるかわからないものです。文系志望であっても、数学や統計なども少しでもいいので学んでおく意味があるのです。
これからは、一つのことだけでなく、いろいろなものを組み合わせて活用していく時代です。大学は、新しい気づきや発見の場がたくさんあります。広い視野で学んでおき、それを大学で花開かましょう。

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名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。