高齢者が毎日、気持ちよく過ごすための看護の役割

高齢者が毎日、気持ちよく過ごすための看護の役割

当たり前のことを当たり前にできる幸せ

「ご飯をおいしく食べる」「夜ぐっすり眠れる」あるいは「すっきりと気持ちよくトイレができる」、いずれも若くて健康な間は、ごく当たり前にできることでしょう。ところが、年を取り、体に不自由なところが出てくると、普通のことが簡単にはできなくなります。少しずつ体の衰える高齢者が、できる限り当たり前の生活をおくれるようサポートするのが「老年看護」の役割です。

医療と看護のバランスを考える

老年看護で重要なのは医療とのバランスをとることです。医療を過剰に行ってしまったために、高齢者の生活をかえって不自由なものにすることがあります。例えば、治療のためにずっと入院したままになったり、さまざまな検査を繰り返した結果、ストレスがたまって元気がなくなってしまったりということがあるのです。治療、検査ともに本来は高齢者を元気にするために行うものです。それなのに逆に高齢者の元気を失わせてしまい、歩く意欲をなくしてしまうとか、生きることを積極的に楽しめなくなってしまうことは、本末転倒です。なぜ、こんなことが起こるのでしょうか。医師は病気を治すことに意識が集中するあまり、患者さんの「生活の質」という視点を見失うことがあるからです。そこを補うのが老年看護です。

看護師が積極的に発言することが大切

医師が治療の専門家だとすれば、看護師は患者さんの理想の生活を考える専門家です。患者さんがどんな暮らし方を望んでいるのかを聞き出し、その生活を実現する方法を考えるのです。看護師は、医師とは異なる視点から患者さんを見た上で、医師と協力して患者さんの暮らしの質を高めます。そのためには患者さんの望みを、医師やそのほかのスタッフに積極的に伝えることが必要です。少々体に不自由なところがあっても、高齢者ができる限り理想に近い暮らしをおくれるようにするなど、老年看護は高齢者の生活の質を高める大切な仕事なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

愛媛大学 医学部 看護学科 教授 陶山 啓子 先生

愛媛大学 医学部 看護学科 教授 陶山 啓子 先生

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看護学、老年看護学、老年社会科学

メッセージ

看護学では、人との関わりの中で多くのことを学びます。長い間看護師として仕事をしてきた中で私は、思いもよらないことが自然にできてしまう不思議な経験を何度もしました。そのような出来事を実現できたのは、患者さんと関わる中でエネルギーをもらったからです。おかげで私は看護師として充実した日々を送ることができました。将来、看護の道をめざす人は、人の気持ちを考えたり、想像したりする習慣をつけておいてください。すばらしい看護師の条件、それは人の気持ちがわかることです。

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愛媛大学は、「学生中心の大学」の実現をめざして、学生の視点に立った改革を進めています。そして、すべての学生が入学から卒業までの過程で、自立した個人として人生を生きていくのに必要な能力を習得することをめざしています。そのため本学では、正課教育のほか、正課外のサークル活動(正課外活動)やボランティア活動、留学、下級生への学習支援(準正課教育)等を通じ、その能力を磨くための多くの機会を設けています。あなたの可能性が広がる学び舎、それが愛媛大学です。