高齢者が毎日、気持ちよく過ごすための看護の役割
当たり前のことを当たり前にできる幸せ
「ご飯をおいしく食べる」「夜ぐっすり眠れる」あるいは「すっきりと気持ちよくトイレができる」、いずれも若くて健康な間は、ごく当たり前にできることでしょう。ところが、年を取り、体に不自由なところが出てくると、普通のことが簡単にはできなくなります。少しずつ体の衰える高齢者が、できる限り当たり前の生活をおくれるようサポートするのが「老年看護」の役割です。
医療と看護のバランスを考える
老年看護で重要なのは医療とのバランスをとることです。医療を過剰に行ってしまったために、高齢者の生活をかえって不自由なものにすることがあります。例えば、治療のためにずっと入院したままになったり、さまざまな検査を繰り返した結果、ストレスがたまって元気がなくなってしまったりということがあるのです。治療、検査ともに本来は高齢者を元気にするために行うものです。それなのに逆に高齢者の元気を失わせてしまい、歩く意欲をなくしてしまうとか、生きることを積極的に楽しめなくなってしまうことは、本末転倒です。なぜ、こんなことが起こるのでしょうか。医師は病気を治すことに意識が集中するあまり、患者さんの「生活の質」という視点を見失うことがあるからです。そこを補うのが老年看護です。
看護師が積極的に発言することが大切
医師が治療の専門家だとすれば、看護師は患者さんの理想の生活を考える専門家です。患者さんがどんな暮らし方を望んでいるのかを聞き出し、その生活を実現する方法を考えるのです。看護師は、医師とは異なる視点から患者さんを見た上で、医師と協力して患者さんの暮らしの質を高めます。そのためには患者さんの望みを、医師やそのほかのスタッフに積極的に伝えることが必要です。少々体に不自由なところがあっても、高齢者ができる限り理想に近い暮らしをおくれるようにするなど、老年看護は高齢者の生活の質を高める大切な仕事なのです。
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