地域の救急医療のニーズをデータ分析で可視化する
年々増加する救急需要と市民へのコスト
救急医療の需要は全国的に年々増加傾向にあります。しかし、救急車の増車や救急隊員の増員にかかるコストは膨大で、必要だからとむやみに数を増やすと自治体の負担が増えて、やがて市民生活を圧迫します。そこで、救急サービスの運用を最適化する取り組みとして、データサイエンスの技術が活用されています。現在、宮崎県宮崎市、神奈川県横浜市、宮城県仙台市、愛媛県松山市などで救急医療の予測研究が進められています。
データ分析で未来の救急需要を予測する
研究では、自治体からの求めに応じて地域の消防署や救急医療と連携し、各所へのヒアリングを行って救急の稼働予測に必要なデータを集めます。そして、収集したデータをもとに過去の救急稼働のデータをモデル化し、季節や地域、時間帯による通報の件数や内容の変化を可視化します。このモデルは各地域の特性に合わせて作成するため、そのままほかの地域で流用することは難しく、それぞれ対象地域に合わせたモデルを構築する必要があります。しかし、人口や気象情報が似ている地域では、同様のアルゴリズムが使える可能性もあります。また、モデルの構築は一度だけで終わりではありません。新たなデータを追加してアルゴリズムを更新し、メンテナンスを続けながら最新の状況と合わせていくことで、より精度を高めていくことができます。
データの可視化が市民を守る
年代別の救急車の利用率やその内容、事故が多い地域など、これまで現場の感覚で把握していたものもデータで再確認することで、将来は地域特有の特殊な事情や共通点も明らかにできるでしょう。また、可視化したデータから地域ごとに必要な救急車の台数や救急隊員の人数を調整することで、未来の需要も考慮した増員や増車が可能となり、市民の安全性を保証することにもつながります。このような研究は、今後多くの地域で求められることになるでしょう。
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