豆腐とゼリー、超音波を当てるとどうなる? 物質の特性を探る
超音波を使うと何がわかる?
超音波を使うとさまざまな物質の特性を測ることが可能です。物質の特性を表す物性値のひとつに「固有音響インピーダンス」というものがあります。音が物体の中を進む速さである音速と密度を掛けると計算できる数値で、空気、水、コンクリートなど物質によって違いがあります。例えばコンクリートの壁に向かって「あ!」と言うと、声が跳ね返ってきます。これは空気とコンクリートの固有音響インピーダンスが大きく異なることから発生する現象です。
豆腐とゼリーでは音の跳ね返り方が違う
食べ物の場合も固有音響インピーダンスに違いが出ます。水の中に同じ形の豆腐と白いゼリーを入れ、少し離れたところから超音波を照射すると、豆腐の表面では音が跳ね返りますが、ゼリーは音が通り抜けていきます。音に対する反応を分析すれば、それが豆腐なのか白いゼリーなのかを判別可能です。
ただし固有音響インピーダンスの違いを正確に計測するには、計測する物質と水などの境界面が完全な平面でなければなりません。凹凸や曲面では計測結果が大きく変わってしまいます。
反射する超音波の大きさから対象の物性値を計測する装置のひとつに超音波顕微鏡というものがあります。通常の顕微鏡ではプレートに置かれた対象を上から観察しますが、超音波顕微鏡ではプレートの下から超音波を送受信して計測します。このようにすると対象とプレートの境界面が平らになり、計測しやすくなるのです。
超音波顕微鏡を病気の診断に活用
超音波顕微鏡は、音速や密度の異なる物質の境目を見極めることができるので、病気の診断にも活用されています。例えば肝臓の中に硬い線維組織が増えていく病気が肝硬変です。肝臓の細胞を採取して超音波顕微鏡で計測することで、線維組織がどのくらい硬くなっているのか、増えているのかを知ることができ、肝硬変の進行を確認することができます。また、通常の細胞とがん細胞で音速や密度が異なる場合も、超音波顕微鏡でどこがそれらの細胞の境目になっているのかを判断することができます。
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千葉大学 工学部 総合工学科 医工学コース 准教授 平田 慎之介 先生
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