保護主義が強まる世界の動きの中で、重要性が高まる国際経済法
第二次世界大戦の一因となった保護主義
1930年代、アメリカ発の経済不況が波及し、日本を含む資本主義諸国は世界恐慌の時代を迎えました。危機を乗り越えるべく、各国は輸入を制限し自国産業を保護する保護主義を採用しました。輸入関税の引き上げやブロック経済化などにより、結果的に、世界経済は低迷していきます。保護主義は貿易戦争だけでなく、領土拡張競争を引き起こし、第二次世界大戦勃発の素地をつくりました。その反省から1948年に発効したのが、自由貿易を志向する、GATT(ガット)という関税や貿易に関する国際協定です。
自由貿易を推進しつつ、知的財産権を保護
その後、GATTに代わり、1995年に発足したのがWTO(世界貿易機関)です。自由貿易の対象範囲を農産物やサービスに拡大するとともに、知的財産権を保護するなど、時代に合った国際ルールを作りました。さらに、貿易摩擦が政治問題化するのを防ぐ紛争解決手続きも強化され、現在、日本をはじめ160カ国以上が加盟しています。
中国も、2001年にWTOに加盟し関税引き下げやサービス市場開放を受け入れました。これで市場経済化が進み、共産党独裁体制が緩むのではと期待されましたが、むしろ国家による経済のコントロールを強めています。
世界経済の発展に欠かせない国際経済法
2018年に入り、アメリカのトランプ大統領が鉄鋼とアルミの輸入関税を引き上げるなど、大国が国際ルールから外れようとしています。米中の大国間の貿易摩擦は、世界恐慌の再来、さらには戦争にもつながりかねません。また、トランプ大統領がNAFTA(北米自由貿易協定)からの脱退を示唆したことで、すでに、メキシコへの投資を控える動きが出ています。
こうした保護主義的な動きが反面教師となって、世界経済の発展に国際経済法がいかに重要か気づかされます。国際経済法への理解は、貿易交渉を担当する官僚や国際機関の職員だけでなく、メーカーや商社、サービス業など、グローバル展開をしている企業で働く人にも欠かせない素養なのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 法学部 法律学科 教授 川島 富士雄 先生
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