講義No.14114 外国文学

日本人が知らないグリム童話とは?

日本人が知らないグリム童話とは?

知っているようで知らないグリム童話

19世紀のドイツを代表する文学の一つが、日本でもよく知られているグリム童話です。しかし日本人はディズニー作品経由で触れることが多く、グリム童話本来の内容や、表現の特徴はあまり知られていません。例えば「灰かぶり(シンデレラ)」と聞くとガラスの靴を想像するでしょう。しかしガラスの靴が登場するのはフランスのペローが書いた「サンドリヨン(シンデレラ)」で、グリム童話に登場するのは金の靴です。ドイツ語版の原著を読むことで、グリム童話本来の姿が見えてくるのです。

ナチス版の「赤ずきん」

グリム童話には、時代・社会風刺やイデオロギーなどを盛り込んで語り直されたパロディーが存在します。「赤ずきん」だけでも、一冊の本にまとめられるくらいの数のパロディーがあります。一例として、ナチスドイツの時代に書かれた「赤ずきん」を見てみましょう。赤ずきんは「ドイツ女子青年同盟」に所属していますが、これはヒトラーユーゲントの下部組織です。さらに読み進めると、ナチ時代に使われていた用語やイデオロギーなどが作中に散りばめられていることがわかります。

グリム童話はパロディーにしやすい

グリム童話はパロディーとの親和性が高いといえます。これは、もとの童話に「中身を抜いて語る」という特徴があるからです。グリム童話は、口伝えで受け継がれてきた物語をまとめたものです。こうした物語は、語り継がれるうちに具体的な場所、時間、名前などの要素が抜け落ちて、話の骨格だけが残ります。具体的な中身がないため、逆にいろいろと中身を詰め込んで語り直す余地があり、パロディーを作りやすいのだといえます。
「中身を抜いて語る」特徴を持つグリム童話は、解釈の幅も広いです。神話と関連付けたり、フロイトの精神分析の手法を使ったりと、多くの観点で研究が行われてきました。作品の解釈は一つとは限らないため、今後もグリム童話の新たな解釈(楽しみ方)が見つかるかもしれません。

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獨協大学 外国語学部 ドイツ語学科 教授 渡部 重美 先生

獨協大学 外国語学部 ドイツ語学科 教授 渡部 重美 先生

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ドイツ文学

メッセージ

文学研究の出発点は、テキストを自分で読むことです。大学の授業では作品について解説をしますが、まずはあなた自身がテキストと向き合ってどう感じたのかを大切にしてほしいです。そのうえで他者の解釈を参考にすると、作品をより深く掘り下げられると思います。外国の文学作品は高尚でとっつきにくいイメージがあるかもしれませんが、さまざまな観点から読み込み掘り下げるコツを大学の授業で学び、テキストを読むことの喜びや楽しさを味わっていただきたいと思います。

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