日本人が知らないグリム童話とは?
知っているようで知らないグリム童話
19世紀のドイツを代表する文学の一つが、日本でもよく知られているグリム童話です。しかし日本人はディズニー作品経由で触れることが多く、グリム童話本来の内容や、表現の特徴はあまり知られていません。例えば「灰かぶり(シンデレラ)」と聞くとガラスの靴を想像するでしょう。しかしガラスの靴が登場するのはフランスのペローが書いた「サンドリヨン(シンデレラ)」で、グリム童話に登場するのは金の靴です。ドイツ語版の原著を読むことで、グリム童話本来の姿が見えてくるのです。
ナチス版の「赤ずきん」
グリム童話には、時代・社会風刺やイデオロギーなどを盛り込んで語り直されたパロディーが存在します。「赤ずきん」だけでも、一冊の本にまとめられるくらいの数のパロディーがあります。一例として、ナチスドイツの時代に書かれた「赤ずきん」を見てみましょう。赤ずきんは「ドイツ女子青年同盟」に所属していますが、これはヒトラーユーゲントの下部組織です。さらに読み進めると、ナチ時代に使われていた用語やイデオロギーなどが作中に散りばめられていることがわかります。
グリム童話はパロディーにしやすい
グリム童話はパロディーとの親和性が高いといえます。これは、もとの童話に「中身を抜いて語る」という特徴があるからです。グリム童話は、口伝えで受け継がれてきた物語をまとめたものです。こうした物語は、語り継がれるうちに具体的な場所、時間、名前などの要素が抜け落ちて、話の骨格だけが残ります。具体的な中身がないため、逆にいろいろと中身を詰め込んで語り直す余地があり、パロディーを作りやすいのだといえます。
「中身を抜いて語る」特徴を持つグリム童話は、解釈の幅も広いです。神話と関連付けたり、フロイトの精神分析の手法を使ったりと、多くの観点で研究が行われてきました。作品の解釈は一つとは限らないため、今後もグリム童話の新たな解釈(楽しみ方)が見つかるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
獨協大学 外国語学部 ドイツ語学科 教授 渡部 重美 先生
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