看護現場の課題を情報技術とデータで解消する看護情報学
看護現場の課題の解決
看護に関わる情報を研究する学問分野として「看護情報学」があります。情報が意味するものは幅広く、現場で生じている不便さや課題を情報技術とデータサイエンスで解決しようとする取り組みも看護情報学が扱う研究の一つです。例えば看護師の負担を可視化するための研究が行われています。1日の中で看護師がどの程度の時間患者に接して看護をしているかは、まだ定量的に示されていません。もしデータで示すことができれば、看護師の負担を適切に評価し、調整することができます。そこで看護師と患者が接触している時間を計測するための機器が開発されました。
複数の患者がいる部屋で正確な計測をするには?
簡易的に計測するための手法の一つとして無線通信技術の活用があります。看護師が患者のベッドサイドに近づいたときに自動で計測が開始され、離れたときに測定を終了する仕組みです。しかし複数の患者がいる大部屋の場合、隣の患者とのベッドの距離はそれほど離れていません。こうした環境では、一人一人の患者に接触した時間を正確に計ることは難しいことがわかってきました。
そこで用いられたのが、交通系ICカードなどにも使われている電子タグ技術です。駅の改札で交通系ICカードをタッチするのと同じように、看護師は患者のベッドサイドにある機器に電子タグを近づけます。するとその患者を適切に認識し、課題となっていた測定精度の改善が認められました。情報技術はこれまで可視化できなかった現象をデータとして抽出することを可能にし、看護現場の課題解決を担う手段として期待されています。
データをどれだけ有効活用できるか
データをどう活用するかも、看護情報学では重要な観点です。看護現場にはほかにも、収集はされているものの活用しきれていないデータが大量にあります。データ分析の力に長けた看護の専門家が少ないことなども要因の一つです。膨大な情報をデータベース化して活用しやすくなれば、看護師の働き方を改善するヒントや、よりよい看護の方法が考えられるはずです。
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