次世代テクノロジーの基盤となる「量子ドット」って何?

次世代テクノロジーの基盤となる「量子ドット」って何?

電子をナノサイズの領域に閉じ込めると……

次世代テクノロジーとして、「量子エレクトロニクス」と呼ばれる分野の研究が進んでいます。量子力学の領域、つまりナノサイズという極小の領域における電子の性質を利用して、現在のテクノロジーに新境地を開く研究です。
ナノとは10⁻⁹のこと。10ナノ平方メートルなどという狭い領域に電子を閉じ込めると、電子が“波”の性質を見せることがわかっています。この電子の“波”の性質を利用すると、従来のものより飛躍的に高性能のテクノロジーが開発できるのです。そのために、まず、電子をナノサイズの領域に閉じ込める技術をもたなければなりません。

1次元での電子の閉じ込めはすでに実用化

現在、ナノサイズでの1次元方向についての電子の閉じ込めは実現されており、「量子井戸」と呼ばれています。厚みが10ナノメートルぐらいの薄い板のなかに電子を閉じ込めるもので、1980年中ごろから実用化が始まり、DVDやブルーレイの光源などの半導体レーザーに量子井戸が活用されています。この量子井戸の実用化は、半導体の結晶の薄い膜を原子レベルでコントロールできる成長技術が開発されたからです。

3次元の方向から閉じ込めたのが「量子ドット」

3次元のすべての方向から電子を閉じ込めたものが「量子ドット」です。ちょうど電子が入った立方体をイメージすればよいでしょう。その一つひとつは1辺が10ナノメートルほどの大きさです。この量子ドットを作る技術の開発が重要ですが、現在では、成長していくうちに結晶の歪みによって自然に3次元的な粒状に変化する現象を利用する方法が活発に研究されています。ただし、1平方センチメートルあたりに数千億個から1兆個の量子ドットをつくり出すことが求められていて、さらに、たくさんあればよいのではなく、量子ドットのサイズが均一であることも求められています。

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先生情報 / 大学情報

電気通信大学 情報理工学域 III類(理工系) 電子工学プログラム 教授 山口 浩一 先生

電気通信大学 情報理工学域 III類(理工系) 電子工学プログラム 教授 山口 浩一 先生

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電子工学、半導体工学

メッセージ

半導体やナノテクノロジーといった電子工学の分野は、次世代技術の研究と開発に携わるやりがいのある分野です。個々の研究には一見、社会とのかかわりが見えにくいものもありますが、携わってみれば、世の中と強くつながっていることも、よくわかってきます。電子工学の分野に興味を持ったら、ぜひ、飛び込んでみてください。そして自分の興味をさらに伸ばして社会に役立てられるよう取り組んでほしいと思います。

先生への質問

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電気通信大学は、東京にある理工系国立大学で、「工学」と「理学」のうち、特に情報分野および理工分野を核とした教育研究を行っています。先端科学技術を支える全分野、例えば、情報、通信、電子、知能機械、ロボティクス、光科学、物理、量子、化学、物質、生命などの分野を網羅しています。社会で活躍する人材の育成をめざし、ものづくりに意欲を燃やす学生の期待に応える教育環境を提供します。