人のための建築が、ヒト以外の生態系と共存する未来
建築は環境である
建築は、人が住まう家のような小規模のものから、美術館や役所などの公共建築、大規模な工場や商業施設まで、多岐にわたります。どの建築物も、人間が快適に生きていくために作られてきました。それらの建築物を、一つ一つの点ではなく、すべてがつながった集合体として見ると、建築は人間が構築した環境そのものを示すものです。これまでの建築物は、人間の快適性や効率性ばかりを追求して作り出されてきましたが、その結果として、地球全体から見ると不自然なものになってしまいました。
自然と共存する姿
日本では2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、建築における省エネ対策を強化するために、消費エネルギーを限りなくゼロにする建物の建築を推進しています。しかし、単に局所的にエネルギー消費量を減らすのではなく、人間以外の生態系との共存を見据えて、より自然な形で人間が暮らせる姿を模索すべきだと言えます。そうすれば、建築はおのずから自然と共存する姿につながっていくはずです。
これまでも人間は、風土に合わせた快適な建築物を試行錯誤して獲得してきました。例えば、吉田兼好が『徒然草』で「家のつくりようは夏をむねとすべし」と記しています。高温多湿の日本では夏をいかに涼しく過ごすが課題であり、そのために日本の家では自然な風通しを導く窓の配置などの工夫を凝らしてきました。
最新技術を活用して
現在では、進歩したデジタル技術を使って、建物内の目に見えない風や熱などの動きを短時間かつ緻密にシミュレーション解析できるようになっています。さらに、これまで手描きで描いていた設計図はコンピュータを使って、いきなり3次元から設計でき、それをもとにしたVRによって建築前に空間の様子を体験できるようになっています。このような技術の進化を建築設計に積極的に活用することで、これまでなし得なかった、ほかの生態系との共存といった課題を解決し、より持続可能な建築を実現することが期待されています。
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