古い町並みや建築物を保存する動きとその問題点
古い町並み保存は世界のトレンド
日本では、文化財保護法に基づいて古い町並みを残す動きが進められています。このような町並みを「重要伝統的建造物群保存地区」と言います。2011年4月現在で、88地区が選定されています。
これまでの都市計画では、普通の町は時代とともに新しく作り替えるのが当たり前だったのですが、日本ではバブル経済が崩壊した20世紀末ごろからその風潮が変化し、古い町並みを生かして町づくりをする流れが主流になってきました。
それは近代化がほぼ最終段階に入り、町を根本から作り直す必要がなくなってきたからです。この風潮は日本だけでなく、世界全体に共通しています。
北関東の典型、桜川市真壁
重要伝統的建造物群保存地区の最新の一例が、茨城県にある桜川市真壁です。ここは江戸風の建築の町並みを基本としていますが、町の中心からは筑波山など周辺の山が見え、道端には石塔があるなど、田舎の雰囲気も残っています。町の外には江戸時代よりも古い城の跡も残っています。このように町と田舎が混在しているのが真壁の特徴です。
保存地区の選定を受けるには、それぞれの建物がどのような歴史を経て現在に至っているのか、その建物がどのような性格をもった建物なのかを調査します。この基礎調査がとても重要です。また、町並みだけでなく、周辺の景観を保全する動きも進んでいます。
保存地区が抱える問題
保存地区の中にある古い建物は、多くが個人の所有物です。保存地区の決定にあたっては、その1軒1軒に、保存をしてくれるかどうかの意思確認をして書類に判を押してもらわなければなりません。しかし中にはいろいろな事情で保存に同意しない人もいます。その手続きをすると、個人宅でも勝手に壊すわけにはいきません。その建物の所有者が建て替えたいと思っていたら保存は強制できません。またそもそも高齢化、過疎化が進んで町の存続自体が危ぶまれる地区が多いのも問題です。
町並み保存には建物自体の保存と同時に、このような問題をどう解決していくかが問われています。
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筑波大学 理工学群 社会工学類 教授 藤川 昌樹 先生
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