コンピュータが拡張する音楽・コンテンツの可能性

微分音とは
J-POPを含め、世界中で聴かれている音楽の多くは西洋音楽の理論、つまり基本的にはピアノの鍵盤で表現できる12の音の組み合わせ(12平均律)で作られています。12平均律にあてはまらない音で歌うと「音痴」と言われたり、そうした音が和音(複数の音の組み合わせ)に含まれていると「不快」「聴き心地が悪い」と感じられたりするのも、私たちが西洋音楽に強い影響を受けているからです。しかし、当然ながら音楽は西洋音楽が誕生する以前からあり、12平均律に当てはまらない音も存在します。こうした音のことを「微分音」と呼びます。
情報の力
現在ある楽器の多くも西洋音楽の影響を受けて作られているため、微分音を奏でることは簡単ではありません。そこで役立つのが情報処理、つまりコンピュータの力です。例えばいくつかの微分音をあらかじめ作り、任意の鍵盤に割り当てることで、キーボードを使って簡単に微分音を鳴らすことができます。こうした機能を音楽制作ソフトと組み合わせれば、作曲においても微分音を取り入れやすくなるでしょう。また、そもそも無数にある微分音を、どう組み合わせれば作曲者の狙い通りの音が表現できるのかを考える上でも、複雑な情報処理を瞬時に行えるコンピュータが大いに力を発揮します。
人間にしかできない表現
近年では音楽生成AIが急速に発達しており、簡単な指示をするだけで複数の曲が短時間で出力されます。しかし、AIが学んだデータの多くは既存の音楽、つまり12平均律をベースにした音楽データであるため、微分音を使った作曲は得意ではありません。このことから、微分音には人間にしかできない新しい音楽表現の可能性が秘められていると言えます。
音楽における微分音のように、映画やアニメ、漫画といったメディア・コンテンツのあり方を大きく変える要素は、まだまだ存在するはずです。そうした要素を見つけだすためには、まずは既存の常識にとらわれず、対象をとことん追究する姿勢が重要なのです。
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駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部 グローバル・メディア学科 准教授平井 辰典 先生
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