LGBTIQ+の人々が難民になるとき
性的マイノリティが抱える複雑な問題
LGBTあるいはLGBTIQ+という言葉を知っているでしょうか。これは、いわゆる性的マイノリティの人々を示す言葉です。かれらは、性的マイノリティであるがゆえに難民として国境を超えて移動することがあります。国、社会、コミュニティによっては同性愛者やトランスジェンダーの人々が、暴力や差別、命の危険にさらされることがその理由です。個人的と思われるセクシュアリティの問題が、公的な領域の法律や移民・難民政策や制度に関連することはあまり知られていないかもしれませんが、現実にはさまざまな課題があります。
ありのままに安心して暮らせる場所は?
非正規移民としてアメリカに入国した人がLGBTIQ+を理由に難民申請できることを知り、滞在許可が降りて安心して引き続き暮らせるようになった、という例があります。通常、自発的な移動(経済移民)と強制的な移動(難民)とは区別されることが多いのですが、こうしたパターンの発見は、その区別が現実に即していないことを教えてくれます。また、たとえ移動先の国で暮らすことができても、人々が、ジェンダー、セクシュアリティ、人種、国籍、言語などの交差性(インターセクショナリティ)の中を生きていることを考えると、新たな差別構造に組み込まれることが見えてきます。
日本ではそもそも、難民認定の制度そのものが制限的であるという課題があり、こうした難民とセクシュアリティの研究はまだ限られています。
LGBTIQ+の難民から見えてくる問い
ところで、そもそもなぜ、どのように、国家は「あなたを難民として受け入れる」と判断できるのでしょうか。だれがそうした判断を「正しい」とし、下す権利を持ちうるのでしょうか。何のために、ある人々を受け入れ、ある人々を受け入れないのでしょうか。そうした線引きにセクシュアリティはどのように関わっているのでしょうか。LGBTIQ+と難民の研究からは多くの領域に向けた問いが発生し、それを考えることが求められています。
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