ゲイ文学から多様性の歴史を考える
イギリスにおける禁じられていた時代
BL(ボーイズラブ)は、男性同士の恋愛を描いたジャンルです。最近ではBLのドラマがテレビでも放映されています。一方で、20世紀初頭のイギリスでは同性愛行為が禁じられており、発覚すれば逮捕されて投獄されることもありました。そのため、『インドへの道』という作品で知られるE・M・フォースターは自らの同性愛性を生涯隠し通し、没後になって同性愛をモチーフとした『モーリス』という作品が公開されています。
戦後アメリカのゲイ文学
アメリカは、戦前の1920年代には映画や劇中に化粧をした男性を登場させることもありましたが、戦争期に入ると、軍隊の規律が乱れるなどといった理由で同性愛者への風当たりが強くなります。共産主義者を取り締まる赤狩りとともに、同性愛者も摘発されて弾圧されていたのです。しかし、戦後になるとアメリカ国内では性に対する研究が進み、それとともに同性愛を題材とする文学作品も一気に増えました。『ティファニーで朝食を』の原作者トルーマン・カポーティは、ゲイであることを公表していますが、作品中で同性愛を扱うことはほぼありませんでした。一方で、劇作家であるテネシー・ウィリアムズは、家庭環境や宗教上のしがらみなどから晩年になるまで自身の同性愛性をカミングアウトできずにいましたが、作品では同性愛をモチーフにしながら、その罰や罪の意識を克明に描き出しています。
BLに見る日本の独自性
日本では、もともと仏教や武家社会の中では男色の歴史がありました。そのため、作品としては古くから存在し、日本を代表する作家である芥川龍之介、太宰治、川端康成なども作品の中で同性愛やトランスジェンダーなどを描いています。さらに現代の日本では、BL文学がジャンルとして確立されています。これらの作品の多くは女性の作家によるものであり、読者も腐女子と呼ばれる女性が占めています。その世界に入り込むことができない女性の作家や読者によって築き上げられたBL文学は、日本独自のカルチャーといえるでしょう。
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