氷水に顔をつけると自律神経のはたらきがわかる?
簡単!でも時間がかかる
自律神経には緊張時にはたらく交感神経と、リラックス時にはたらく副交感神経の2種類があり、このバランスが崩れると息切れや高血圧といった不調が生じます。健康と密接に関係する自律神経を評価する指標として、「心拍数の変化」があります。具体的には、20分間横になり安静にした後に、息を2秒間吸って2秒間吐くという呼吸を5分間行った際の心拍数を測定して評価する方法が確立しています。特殊な機器を必要としないシンプルな方法ですが、時間がかかるのが悩みどころです。そこで、より短時間で簡単にできる方法として研究が進んでいるのが、「潜水反射」を利用した評価です。
「潜水反射」で実験すると
冷たい水に顔をつけると、体が水中に潜ったものとみなして酸素を節約しようとするため、心拍数が低くなる「潜水反射」が起きます。心拍数が低くなるということは、副交感神経が強く働いているということです。氷水を張った洗面器に30秒間顔をつけることでこの反射を起こし、心拍数の落ち方から自律神経を評価するのです。ある実験で、中高齢の男女数十人に潜水反射試験を行ったところ、糖尿病の患者は健康な人よりも心拍数の落ち方が弱い傾向が示されました。また、体力のある高齢者は体力のない高齢者より心拍数が落ちやすいのに対し、若者では体力の有無にかかわらず同じように心拍数が落ちる、というデータがあります。以前から「体力をつけると副交感神経の働きが良くなる(心拍数が落ちる)」ことが分かっていますが、なぜ若者では体力の有無にかかわらず同じように心拍数が落ちるのか、さらなる検討が続いています。
多忙な現代人の健康のために
もともと潜水反射試験は、安全にスキューバダイビングを行うための検査として普及していました。これを応用した自律神経の評価法が確立されれば、健康診断への適用が考えられます。例えば多忙なビジネスパーソンの健康診断に組み込むことで、短時間で健康状態が評価でき、生活習慣病などの早期発見や予防につながることが期待されます。
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