人とモノをつなぎ、認知症でも安心な生活を支援する作業療法士

認知症の人のための支援機器
今は誰もが認知症の当事者や介護者になり得る時代です。そんな中で、何らかの不自由さがある人に自分で日常生活を送れるよう支援する作業療法士には、できることがたくさんあります。
その一つが、認知症による行動障害を防ぐ支援機器の提供です。しまい忘れ、置き忘れが増えて、それを「盗られたと勘違いする」そんな症状もあります。そこで、通帳や鍵など失くしやすいものを音で見つけられるアイテムを使えば、本人も家族もその都度慌てなくてすみます。音で知らせて薬の飲み忘れを防ぐ服薬支援機器や、認知症の人を対象にスケジュールを知らせるアプリも開発されています。
本人と家族の安心をサポート
ただし、単に提供するのではなく、認知症の段階やその人に合わせたサポートが大切です。中には「人に頼るのは嫌だ」と、支援を断る人もいます。一方、その人の思いにしっかり向き合い、「まずは服薬支援機器のみを」と導入したことをきっかけに、ヘルパーやデイサービスを利用するようになった人もいます。
支援機器があることで、認知症者本人はもちろん、家族も安心できます。認知症になることは止められなくても、「認知症になっても大丈夫」という安心感につなげられます。
工学や福祉とともに共生社会を
支援機器は、認知症の人が実際に使いやすいものが必要です。社会の高齢化を受けて、企業による開発も活発化し、現場と道具の活用を知る作業療法士の意見が求められています。支援に結びつけるには、福祉関係者との連携も不可欠です。作業療法士は、工学と福祉の双方と関わり、最適なアイテムを届けられます。
しかし、こうした支援機器はまだ一般に知られていません。薬局や病院、行政、社会福祉士などと連携した周知の活動が展開されています。また、気軽に使えるように保険適用にすることも重要な課題の一つです。認知症になっても誰もが「よりよく暮らせる」社会の実現に向けて、アイテムにも患者にも精通した作業療法士だからこその活躍が期待されています。
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先生情報 / 大学情報

信州大学医学部 保健学科 作業療法学専攻 教授上村 智子 先生
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