外国語の習得が大変なのはなぜ?

外国語の習得が大変なのはなぜ?

実は奥深い「から」

普段私たちが何気なく使っている日本語の理由節「から」には、いくつもの機能があります。「寝坊したから遅刻しました」といった「理由」を示すだけでなく、「ここにカバンがあるから、彼はまだ校内にいるだろう」と明確な理由ではない「認識」を示す機能もあります。さらに、「ソースは戸棚にあるから自由に使ってください」といった、自由に使っていいという「行為の前提」を示す機能もあります。このように、私たちが母語として無意識に使っている言葉の裏には複雑な背景が隠されているのです。

母語にないものは学ぶのもひと苦労

この多義的な「から」を、第二言語として日本語を学ぶ人たちがどう理解するかを調べた研究があります。日本語を学ぶ韓国語話者と中国語話者の大学生約140名に、「から」に関する文法テストを実施したところ、「理由」と「認識」については韓国語話者も中国語話者も高得点をマークして、理解度が高いことがわかりました。一方で「行為の前提」を示す使い方では、韓国語話者の平均点6.53に対して、中国語話者の平均点は3.96と、大きく差がつきました。韓国語の理由節には、日本語と同様に「理由」「認識」「行為の前提」の機能があるのに対し、中国語の理由節には「理由」「認識」の機能はあるものの「行為の前提」の機能がありません。そのため中国語話者の理解度が、ほかの機能に比べると低くなる傾向があったと考えられます。

確実な学びのためには理解と準備が大切

第二言語学習者の母語の特性からくる「つまずく可能性が高いポイント」を教える側が把握しておくことは授業運営上、大切なことです。日本語教師自身が、教える日本語の中身をしっかりと理解して、学習者に説明できるようにしておく必要があります。日本人だからといって、誰でも日本語を教えることができるわけではなく、しっかりと、体系的に勉強する必要があるのです。このような知見の積み重ねやノウハウの共有が日本語教育の質の向上につながるため、研究も活発に行われています。

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先生情報 / 大学情報

創価大学 文学部 人間学科 教授 斉藤 信浩 先生

創価大学 文学部 人間学科 教授 斉藤 信浩 先生

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日本語教育学、第二言語習得

先生が目指すSDGs

メッセージ

近年、外国人移住者が増えており、日本語教育に関心が寄せられています。日本語教師の資格も国家資格に移行することで教師の質の向上が期待されます。日本語を通じて世界中の人とつながりが持てる日本語教師は、とてもやりがいのある仕事です。海外志向のある人には向いています。ただ日本国内では、日本語教師として生計が立てられるような職場が極めて少ないのが現状です。それでも日本語教師をめざしたいと考えるなら、高校生のうちにできることとしては、漢字検定など、身近な資格試験などに取り組んでみるといいでしょう。

創価大学に関心を持ったあなたは

創立以来、学生と教職員が大学を創る者として、互いに対話、研鑽を重ねながら大学の価値を高めてきました。こうした教育・研究および社会貢献の成果は、文部科学省のGP(Good Practice)採択など、外部からの高い評価となり、普遍的な価値として、現代の大学教育に大きな示唆を与えています。また国際化が叫ばれる中、62カ国・地域、225大学との交流協定は、真の国際人養成に大いに貢献できることでしょう。