いい面も悪い面も 遺伝子編集からデュアルユースを考える
国際的な場で重要視されるデュアルユース
近年、遺伝子編集の技術は目覚ましく進歩しています。本来は、人間の福祉や社会をよりよくするために開発されるべき技術ですが、一方で生物兵器など軍事目的での使用も可能です。こうした両面をあわせ持つことは「デュアルユース」と呼ばれており、国連などの軍縮や軍備管理が議論される場で重要視されています。
デュアルユース技術の管理
国連などの軍縮を議論する場で、遺伝子編集技術の発展について情報共有を行い、どのように連携できるか検討しています。遺伝子編集技術は、新しい薬の開発につながる一方で、特定の人種のみを攻撃する新しいウィルスが開発されるなど悪用される可能性があるからです。また、遺伝子情報が流出することによっても同じ問題が発生します。遺伝子は究極の「個人情報」です。例えば欧米では髪の毛1本からその人のルーツを分析するベンチャービジネスが拡大しています。こうした企業が集めた遺伝子情報が流出したり不正に売買されることにより、特定の遺伝子を持つ集団を攻撃するウイルスの開発につながる可能性があります。このため、このようなデュアルユース技術や研究をどのように管理するかについて関心が高まっています。
各国が連携して行動規範を
遺伝子の研究は、設備が整った大企業や大きな研究機関だけではなく、大学や個人レベルでも行われているため、一層デュアルユース研究に対する認識を持つことが重要です。日本では、デュアルユース技術について認識は高まっていますが、遺伝子編集のようなデュアルユース研究をどのように管理していくのか模索しているのが現状です。遺伝子編集をはじめとする新しい技術開発は、日本だけではなく海外の科学者たちと共同で研究を進めていくことでより発展します。社会や人の暮らしをよりよくする新たな技術が悪用されることを防ぐために、今後、各国が連携しながらデュアルユース研究に対して協力することが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
東洋英和女学院大学 国際社会学部 国際社会学科 准教授 田中 極子 先生
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