高所トレーニングで持久力アップってホント?

高所トレーニングで持久力アップってホント?

万人向きではない高所トレーニング

マラソンなどの持久力を必要とするスポーツにおいて、高所トレーニングが効果的であるというイメージを持っている人は多いはずです。確かに酸素が薄い高所でのトレーニングは、体が酸素をより取り込めるような状態になることは実証されています。しかし、実は適応性や有用性について非常にシビアな条件があり、高所トレーニングをすれば誰でもタイムが伸びるとは限らないことが研究で解明されています。

条件はシビア、リスクも高い

低酸素環境でのトレーニングは血液(ヘモグロビン)を増やして体全体に酸素を行きわたらせることが目的の一つですが、適応するかどうかには個人差があります。例えば、頸(けい)動脈小体という血液内の酸素濃度を感知する器官の感受性が低い人は、自分の体が低酸素状態であると認識しないため、呼吸が反応せず、高山病になりやすいことが知られています。
適応できる体質の人でも4週間以上、高所に滞在しなければ効果が得られず、さらに血液が多くなる効果を得られても長期間その効果は持続しません。個人差はありますが、一般的に効果が得られる高所の目安は2,500m以上とされており、国内では場所も限られます。期間やコストの面から考えてもリスクは高いのです。

人間の正体をつかむスポーツ科学

そのような高所トレーニングも実施の工夫によって失敗のリスクを減らすことができます。また、最近の研究では持久的種目だけでなく、短時間運動種目に対する効果にも注目して研究されています。このようにスポーツ科学は、これまで是とされてきたことが本当に正しいのか、またある条件下、動作下で体がどう反応し、どんな効果を得られるかなど、人体のメカニズムを詳細に解き明かしていきます。それにより、それぞれに合ったトレーニング方法を見つけ出すと共に、余分なリスクを排除した効果的な能力向上の可能性を手繰り寄せることにもつながります。これは、スポーツという視点から「人間の正体をつかむ」ことともいえるのです。

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大阪教育大学 教育学部 教員養成課程 保健体育部門 准教授 小川 剛司 先生

大阪教育大学 教育学部 教員養成課程 保健体育部門 准教授 小川 剛司 先生

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スポーツ科学

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スポーツ関係に携わりたいと思っているなら、「スポーツをやることも、スポーツを知ることも、両方を楽しむことが大事」ということを伝えたいです。スポーツをするのはもちろんですが、そのスポーツはどんな競技かを知ることはすごく重要です。それが大学でスポーツを勉強することの意味になりますし、将来、選手や指導者、スタッフなどとしてスポーツに関わっていく場合、知っていることはアドバンテージになります。スポーツをすること、知ることの両方がスポーツを楽しむということにつながります。

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