ファストファッションも明暗を分けた、企業の強みと変化への対応
従来通りのやり方
日本を代表するある重工業メーカーは、国産初のジェット旅客機の開発という新規事業に乗り出して1兆円という巨額の予算をかけましたが、1機も販売することなく事業から撤退しました。多くの技術的な蓄積や資金力があるにもかかわらず、失敗したのはなぜでしょうか。
企業にはそれぞれの強みがあり、その強みを生かして競争に打ち勝とうとします。強みは一般的に日々の業務(ルーティン)に埋め込まれる形で力を発揮しますが、新規事業に挑む時、「従来通りのやり方」が必ずしも強みになるとは限りません。むしろそれがマイナスの力(組織慣性)として作用し、思わぬ失敗の結果につながることがあります。
企業の明暗を分けたもの
2000年代に急拡大したファストファッション業界においても、新しい市場環境への適応が各ブランドの明暗を分けました。安価な製品を販売することが受け入れられていた時代から、大量生産・大量消費による環境負荷の高さが問題視される時代に変わりました。これにうまく適応して商品のリサイクル展開を行ったり、環境負荷の少ない素材や製法を導入したりと、コストをかけてでも変化したブランドは今なお成長しています。その一方で、そうした対応ができなかった多くのブランドが姿を消していったのです。
リアルな企業活動から得る学び
競争力のある既存のビジネスをさらに深めながら、新たなチャレンジによって環境変化に対応するビジネスのあり方を「両利き経営」といいます。これまで以上に環境変化が激しく、さらに社会に対してポジティブな影響を与えるビジネスが重視される現代では、両利き経営を実現させることは非常に重要な意味をもっています。
経営学では、実際の企業やその活動を対象として企業の戦略や産業を取り巻く変化を分析し、経営者や社員の声に触れて、またそれらを経営学が確立してきた理論にあてはめて考えます。そのことで、これからのビジネスや会社経営に必要な要素が見えてくるのです。
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創価大学 経営学部 経営学科 教授 安田 賢憲 先生
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