すべての人が自分の尊厳を尊重される精神科看護の実現を
精神科看護師の着目点の独自性
精神科の看護師と、内科や外科などの看護師との大きな違いは、後者がデータに注目するのに対して精神科看護師は人の表情や声のトーンなどまで観察していくことです。人の機嫌はデータでは測れないため、それらの観察を介して今の症状、体調などを見計らって声をかけるのが精神科の看護の手段となっています。そのために、看護師は個人的にいろいろと体験しておくことが重要で、そこで自分がどんな感情を抱いたかも看護の広がりに通じます。それを患者の状態に合わせれば、より丁寧なケアが実現できます。
大きな問題は小さな不適切の積み重ねから
「丁寧なケア」と同時に、「不適切なケア」というものも少なからず存在します。看護師自身は意識していなくとも、仕事に追われて「また後で」と患者を半ば突き放してしまうことなどがその例です。こういった、一見仕方ないような小さな要因が重なっていくと、いずれは看護側の暴力や虐待といった大きな問題につながっていく可能性があります。
これまで、不適切ケアは主に介護の世界で問題視されてきており、精神科ではそれほど大きく着目はされていませんでした。特に対象者が日常生活を送る上での不適切なケアがなぜ起こるのか、その要因を究明する研究は少ないのです。しかし現在ではそこに着目した、患者にとっての居心地の良い場所作りのために看護師がどんな意識を持てばいいかを考える研究が進められています。
今だけでなく、将来をより良くするために
この研究では、現場に立つ看護師にインタビューを行い、そこから読み取れる事柄をデータ化して分析が行われています。加えて先行研究も参考にした結果、患者が問題行動を起こすのは病気のためだけでなく、病棟の文化や雰囲気も影響していることがわかりました。今後この研究は、さらに細かな部分に光が当てられていく予定です。その成果は、将来的に看護師育成のための教育や、病院などにおける倫理研修などにも影響を与えていくはずです。
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