患者さんと家族の将来を左右する「在宅看護」とは?
療養者本人だけでなく家族へのケアも
在宅看護とは、入院して治療を受けるのではなく、自宅での療養を選択した人に対する看護をいいます。がんや老衰などにより終末期医療を受ける人のうち、「自宅で最期を迎えたい」という要望を持つ人は全体の約7割にのぼると言われていますが、現実には、在宅看護を実現できる人は13%にとどまっています。それには、「家族に迷惑をかけたくない」という患者本人の思いや、在宅看護に対する家族の不安などが影響していると考えられます。
本人や家族が希望した最期が迎えられるかどうかは、本人と家族の将来を左右することにもなりかねない、大きな問題です。在宅看護を選択した場合、看護師が定期的に訪問看護をすることになりますが、その際に、療養者の看護だけではなく、その家族に対してどのような配慮やケアを行っていくべきかも課題となっています。
何かに「とらわれている」家族たち
自宅療養をする場合、日常のケアは家族に任せることになります。家族としては、療養者本人を穏やかに看取りたいのに、本人の体調をみたり、身のまわりの世話をしたりするのに時間が費やされてしまい、思い出を語ったり悲しみにひたったりしながら最期を受け入れていくというプロセスがおろそかになることが多々あります。この問題の難しいところは、家族自身が介護の負担感や義務感など、何かに「とらわれている」ということに、なかなか気づけないことです。
丁寧な会話からアプリの利用まで
訪問看護師が家族のメンタルにも配慮し、変化に気づくための手法としては、家族の思いを丁寧に聞くことによって、何を望んでいるのか、何に困っているのかを探っていく「ナラティブ・アプローチ」という方法があります。ナラティブとは物語・話術という意味です。あるいはアプリなど、用意された質問に答えることで、家族が自分で課題に気づけるツールもあります。これらを活用しながら、療養者本人とその家族の双方をケアしていくことが、訪問看護師には求められるのです。
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先生情報 / 大学情報
武蔵野大学 看護学部 看護学科 准教授 遠山 寛子 先生
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