「病人=お粥」はもう古い? 管理栄養士の力で最適な食事を!
患者さん一人ひとりを尊重する「人間栄養学」
「のどが痛い」「胃が重い」と、食事を残す入院患者がいます。でも、それは本心ではなく、患者さんが遠慮して本音を言えず、本当は食事の味つけや内容が気にいらずに食べ残したのかもしれません。また、よく患者さんに「おかゆ」を提供しますが、実は高齢者の中にはおかゆが嫌いで、白いご飯なら食べられるという人が意外と多いのです。栄養は病気の回復や予防に必要ですが、人によって食べ物の好みもさまざまです。栄養成分だけに着目した食品栄養学ではなく、患者個人に着目した「人間栄養学」が注目されています。
みそ汁は、塩分を減らすより、量を減らす
医師が「塩分を一日3gまでにおさえて」と食事の指示を出したとします。しかし、そんな食事は薄味でおいしくありません。その時、患者さんの立場になって「最初のうちは、5gまで増やせませんか」と医師に提案する、あるいは患者さんに「なぜ、このような食事が必要なのか」を説明し、納得してもらうコミュニケーション能力が管理栄養士には求められます。
入院患者にとって、食事は一番の楽しみで、人間の尊厳を保つ大事なものです。おいしく食べてもらうために、流動食を見た目にもおいしそうな本来の魚や野菜の形に成型したり、塩分が好きなのに、塩分を控えなければならない患者さんには、塩分の濃いみそ汁を通常の半分量だけ提供したりという工夫も大切な役目です。
管理栄養士は、チーム医療の重要な一員
アメリカの病院では、食事を作る給食管理栄養士とは別に、病棟で患者さんの栄養ケアを担う臨床栄養師の仕組みが確立しています。日本でも専門の「臨床栄養師」を養成する学会があります。
管理栄養士には、医学と食品の知識を持ち献立提案を行う役割があり、さまざまな医療職が力を合わせる「チーム医療」の重要な一員という自覚が必要です。同時に、本当は「食べられる」のに「食べられない」状況に置かれている患者さんを、人間栄養学を通してサポートし、自らの口から食べてもらうことも大切な役割です。
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先生情報 / 大学情報
椙山女学園大学 生活科学部 管理栄養学科 教授 加藤 昌彦 先生
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