言語で見る風景 あなたの身近にある日本語を観察しよう!
「日本語」と「国語」の違い
日本人は小中高と、学校で国語教育を受けています。しかし「日本語を学ぶ」という意識はほとんど持っていないでしょう。そもそも日本語教育と国語教育は、理論から違うものなのです。国語は日本人の母語としての第一言語で、意識しなくても家庭や学校の中で自然に習得していくものです。それに対して日本語は、外国人などに第二言語、あるいは外国語として教えていくものです。ひらがな・カタカナに始まり、それらの音声を覚えてから段階的に文型や文法を学び、さらに上級になれば複雑な文章や会話の学習へと続きます。つまり、日本語の学習は意識的、体系的に行われるのです。このため、時として日本語に関する問いに対して、客観的な視点を持っている外国人の方が気がつくのが早いということもあります。
看板などの言語景観に注目
言語教育の研究では、研究者・教師によるオリジナル教材の開発が行われてきました。その中に、日本の風景にあふれる日本語の看板や案内などを教材として、体系化した方法論があります。そうした書き言葉がある風景を「言語景観」と呼び、飲食店の看板やポスター、危険を知らせる標識など、普段何気なく見ていたものを社会的・文化的背景などもふまえて分類し、日本語や日本社会を理解していきます。例えば、ラーメンという単語一つでも平仮名や漢字を自由に組み合わせて使うので、その表記は実にさまざまです。また、標識にカッパの絵が描かれていると、日本人は水難の危険を連想しますが、昔話を知らない外国人には理解できません。
多文化共生社会はニュートラルな視点から
多文化共生の理解には、他国の文化や考え方を学ぶことが重要です。そして、それと同じように重要なのは、自身の言語である日本語、また日本社会・文化について学びを深めることです。身近な言語景観を外国人と一緒に調査分析してみましょう。いつもとは違う観点から、日本社会を再発見できるだけではなく、異文化コミュニケーションや多文化共生社会へのニュートラルな視点の獲得が期待できます。
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