「ついうっかり」に光を当てる、「行動経済学」
人間は間違ってしまう生き物
伝統的な経済学では、合理的な行動を取る人間像が前提とされています。しかし、人間はいつでも理性的な判断ができるわけではなく、「ついうっかり」選択を間違えてしまう場合も少なくありません。メロンパンよりチョコレートパンが好きな人がコンビニで買い物をする場合、従来の経済学ではその人は当然チョコレートパンを選ぶと考えます。ところが現実では、メロンパンが目立つ場所に置かれていたため、ついそちらを手に取ってしまうというケースが起こるのです。1970年頃から発展してきた行動経済学では、伝統的な経済学やファイナンス理論では解明できない、人間の非合理でおっちょこちょいな行動の理由を分析していきます。
バブル経済が起こる背景
もうけ話になると思って投資家たちが飛びついて、実際の資産価値からかけ離れた異常な値段がつけられる状況を「バブル経済」と呼びます。1700年代のオランダでは、チューリップの球根が異常な高値で取引される「チューリップ・バブル」が起こりました。珍しい花が咲くとうたわれた新種のチューリップの球根が投資の対象となり、ピーク時には球根一個で豪邸が買えるほどの値段にまで高騰しました。このチューリップ・バブルは数年で終わり、価格は急落してしまいます。こうした投機ブームの盛り上がりは、人の注目や期待を集めて気持ちを高ぶらせることで、どれだけうっかりさせるかに関係しています。
大穴の馬券に群がる「カモ」
同じように、競馬でも勝つ確率が低い「大穴」に過剰な注目と期待が寄せられる現象がみられます。もし当たれば大もうけができるという期待のせいで、人々はまず当たることのない大穴を買ってしまいやすいのです。結果、大穴には投機商品としても不当な割高な価格がついてしまいます。世の中にはこのような非合理な行動をする人をカモにしてもうけようとする抜け目のない人もたくさんいます。行動経済学では、両者のせめぎあいをデータから検証するとともに、社会や制度の望ましい仕組みについて検討していきます。
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