脳が見せる不思議な心の世界
多くの謎に包まれた脳と視覚の仕組み
視覚は、生きていくために人間がとても頼りにしている機能の1つです。脳の中でも、視覚をつかさどる役割を担う大脳皮質の領域はかなりの大きさを占めています。例えば私たちは直線と破線の違いを瞬時に見分けられます。しかし、なぜそれができるのか、つまり脳の中で神経細胞がどのように視覚情報を受け取り表現しているのかという謎は、その多くがまだ解明されていません。
脳には顔認識処理専門の部位がある
人間が目でものを見るメカニズムはよくカメラの仕組みに例えられますが、人間の目と脳は、映像をそのまま保存するカメラよりもはるかに複雑な処理を行っています。例えば、人間は他人の顔を識別する能力が極めて高いことがわかっています。顔写真のようにあいまいな画像情報しかなくても、目の前にいる人の顔とその写真とを見比べて、かなりの精度で同一人物かどうかを判別できます。2つの写真を見比べる場合でも、各部分の違いだけでなく、全体が統合された形での処理も高い精度で行われるため、ほんのわずかな違いですら見分ける能力が驚くほど高いのです。ただし、顔が逆さまだとこの高い能力は発揮されません。
こうした顔認識に関わる情報処理は、すべて脳で行われています。顔の分析を行う脳部位をケガや病気などで損傷した人の中には、他人の顔の識別ができなくなる相貌失認(そうぼうしつにん)という症状が出る場合があります。
失った身体機能を取り戻すために
現在、何らかの要因で失明した人が視覚を取り戻すために、カメラで撮影した映像を脳に入力するブレインマシンインタフェース(BMI)という技術の開発が進められています。このとき、単に撮影した映像を脳につなぐだけでは、BMIは機能しません。脳や視覚神経の働きを明らかにして、外の世界の情報が脳の中でどのように表現されているのかを解き明かす一連の研究は、失った身体機能を取り戻すことにもつながるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
専修大学 人間科学部 心理学科 教授 石金 浩史 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
生理心理学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?