19世紀の国際関係の再現? 注目されるEUを離脱したイギリス
イギリスは4つの国の連合王国
イギリスは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドという4つの国の連合王国です。全人口の8割はイングランドが占めていますが、占領と併合によって1つの国として統合しました。とは言え、それぞれの国は自国にアイデンティティと誇りを持っています。ラグビーやサッカーのワールドカップでは、イギリス代表ではなく4つの国の代表が参加します。イギリスは決して一枚岩であるとはいえないのです。特にスコットランドはEUに残りたいという希望があるため、イギリスからの独立問題が生じています。
イギリスとアジア諸国との関係
国内では複雑な歴史を持つイギリスですが、19世紀のイギリスは大英帝国と言われるように、世界で植民地を拡大する大国でした。アジアにも進出して、中国から陶磁器やお茶を輸入し、支払った銀を回収するためにインドのアヘンを中国に売るという三角貿易で巨万の富を得ました。その結果、中国と激しく対立してアヘン戦争を起こしました。一方、日本などのアジア諸国に対しては、不平等条約を結び有利に貿易を行いました。しかし、のちに日本とは条約を改正し1902年に日英同盟という軍事同盟を結んでいます。これはロシアの南下に対抗して中国での利権を守るために日本と協力することが目的でした。中国はその頃でも人口数億人の大国で、その市場を失うことは得策ではなかったのです。
今まで以上にアジアが国際政治の中心になる可能性
現在の国際関係を見ると19世紀末の状態が再現されつつあります。中国という巨大市場をめざして西側諸国は中国と関係を持とうとしています。違うのは、中国がさらに大国になっているということです。ただ、中国は政治体制が自由主義圏とは異なり、国内に民族問題を抱えています。
イギリスはEUを離脱することで、他国と自由に向き合うことが可能になりました。このような動きによって、イギリスはこれまで以上にアジア太平洋地域の問題に関与する可能性が高くなってきています。
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大阪学院大学 国際学部 国際学科 准教授 尾﨑 庸介 先生
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