あなたの人生を左右する「文化の力」とは?
趣味や好みは、個人的なことではない?
社会で重要なものは、お金などの「経済資本」、人脈やネットワークの「社会関係資本」のほかに、もう一つ、趣味や教養など幼少期から家庭や学校で経験し蓄積されてきた「文化資本」があります。好きな音楽や絵画、場所など、好みは個人の自由な選択と思われがちですが、統計的に見ると経営者や実業家の好み、研究者や芸術家の好み、中間層の好みなど社会階層である程度異なります。「クラッシックコンサートは敷居が高い」と感じるのも必ずしも個人の問題ではなく、家庭や地域、学校など、どんな集団の中にいたかによっても影響を受けています。
格差問題は「お金の問題」なのか
これまでの研究から、学力・学歴や友人関係、職業、結婚相手など人生のさまざまな選択や成功/失敗に、趣味や教養、センスの良さなど身体に刻み込まれた「文化資本」が、密かに大きな影響を及ぼすことがわかってきました。格差問題とは「経済的な問題」だけではなく、文化的な問題でもあるのです。人生の出発点から不利な状況にあり、それを嘆く人も増えています。格差を経済だけでとらえるのではなく、その陰に潜む「文化資本」の問題を見ることで解決の糸口が見えてきます。
「あなたの素質」のせいにしない社会学
「文化資本」には、知識や教養、芸術の鑑賞眼、センスの良さ、言葉使い、学歴資格などが含まれます。学校は文化資本を効率的にあなたに伝えますが、家庭や学校、地域の中で、幼い頃から時間をかけて体得された文化資本は、その後のライフスタイルや結婚、就職、価値観を左右していきます。環境によって個々人の文化資本が異なって形成されるのであれば、入試や人生での成功も失敗も生まれつきの素質や自分自身のせいだと限定せずに、むしろ社会の多面的な影響を考える必要があります。失敗を個人化せず、社会や環境の影響にも目を向けて原因を探ること、これが「社会学的な思考法」です。自分の選択の幅を縛っている社会的な制約に気づくことで、新たな可能性へと扉が開けるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
駒澤大学 文学部 社会学科・社会学専攻 教授 片岡 栄美 先生
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