「イケメン」な仏像は、どんな特徴を持っているのか?
仏像は人間に近づいてきた?
近年、仏像を観賞する人が増えています。仏像を「かわいい」「イケメン」などと形容する人もいますが、どこか人間のような顔立ちをしている仏像ほど、そう見られることが多いようです。
初期の仏像は、超然とした固い表情でしたが、平安時代から鎌倉時代にかけてリアリズムが追求されるようになると、例えば、眼に水晶をはめ込み眼球を作るようになりました。それどころか、布や紙で作った内臓が体内に入れられている仏像もあります。これはおそらく製作者の芸術性によるもので、映画監督の黒澤明はカメラに映らない引き出しの中に物を入れたと言われていますが、それと似たところがあったのでしょう。
観音様はマッチョだった?
また写実性を追求すると、仏像はそれぞれの地域の人の顔になります。ですから日本の仏像は丸顔の薄い顔立ちに変わりました。各国の仏像に共通して言えることは、どこか女性的な雰囲気に変化していることです。おそらく仏教で言う「慈悲」を表現した結果なのでしょう。その好例が観音像で、最初期にインドで作られた観音像は髭(ひげ)が生え、がっちりとした体型でした。しかし「観音像=慈悲」のイメージが強かった中国では、髪を伸ばすなど女性的な雰囲気を強調するようになりました。日本の観音像もその影響で女性的になったのです。
仏像が、動き始めた?
顔以外にもさまざまな変化があり、ポージングも直立不動から動きがつけられ始めます。仏像の多くは三体がセットで祭られているのですが、左右の仏像が片足を前に出し、体を本尊の方に傾けるようになりました。そうすると中央を起点に左右が湾曲する形となり、正面から見たとき、より美しく感じられるのです。また指も、すべてピンと伸ばすのではなく、1本を軽く曲げるといった工夫がされています。
このように仏像は時代や地域ごとに変化してきましたが、意外なことに鎌倉時代以降はあまり変化していません。仏像はある種、鎌倉時代で完成を迎えたと言えるのです。
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先生情報 / 大学情報
駒澤大学 仏教学部 禅学科 教授 村松 哲文 先生
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