生きづらさを抱える子どもと家族を支援する 臨床心理士と公認心理師
診断後の適切な対応を支援
自閉症スペクトラムやADHD、または学習障害など、発達障害と診断される子どもの症状はとても多様です。また、そうした症状の背景には生活環境が影響している場合もあり、いじめや虐待の有無、家族の状況なども把握しながら、一人ひとりを尊重した対応が求められます。しかし、発達障害と診断されると、本人も家族も周囲の人たちも、「障がいだから仕方がない」とあきらめてしまうことも少なくありません。その先の対応がおろそかにならないよう、発達障害をもつ子どもとその家族を支援するのが臨床心理士と公認心理師です。
目標を見つける手助けをする
子どもと家族の支援を専門とする臨床心理士は、心理療法による支援を、通常、週1回の面接を通して行います。子どもが自由に表現できる場をつくり、話すことに不安を感じたり戸惑ったりする子どもに寄り添いながら、それぞれが自分と向き合い、自分の歩む道を見いだすことを手助けします。そこには、長い時間をかけることが必要ですが、たとえば自閉症だと診断された子どもが相手の目を見られるようになったり、言葉を出せるようになったりするなど、大きな変化が見られることがあります。また、不登校の中学生が、中学校に戻ることではなく、高校生になるという目標を見つけることで自信を取り戻し、自分の気持ちをしっかりと伝えられるようになることもあります。
答えのない事態に耐える力を育てる
臨床心理士は、安定的に適切な心理療法が受けられる環境づくりを推進します。その先にめざすのは、生きる強さを育てることにあります。これは、イギリスの詩人ジョン・キーツが「ネガティブ・ケイパビリティ(負の能力)」という言葉で表現し、のちにイギリスの精神科医ウィルフレッド・ビオンによって用いられた概念です。生きていれば答えを見いだせないことはたくさんあり、不確実で曖昧な状況は心地の良くないものですが、そういう時ほど、しなやかに持ちこたえる力が必要です。また、誰もが幸せを感じられる社会づくりが急がれます。
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先生情報 / 大学情報
大阪経済大学 人間科学部 人間科学科 教授 鵜飼 奈津子 先生
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