「バスを呼ぶ」という発想で作り出された省電力化バス停
路線バスがない地域では
地方には、住民がごく少ない場所があります。そこでは買い物や通院といった何かの用事で出かけるときに自動車やバスが使われますが、高齢者が多いこともあってバスの方が需要は高いと考えられます。しかし、過疎地はそもそも利用者数が少ないため、収益化やコスト面などを考えると路線バスを通すことは現実的ではありません。
そこでスタートしたのが、「ノーマリオフ知的バス停」の研究です。ここで言う「バス」は、時刻表に沿って走るものではなく、設置されたボタンを押すと数分後に来るというものです。「ノーマリオフ」は使用されないときには電源をオフにして、必要になったら即座にオンに切り替える動作のことで、省電力に役立ちます。この仕組みを使って、ある区間に期間限定でバスを走らせる実装実験が行われました。
タクシーのように呼べるバス
ノーマリオフ知的バス停は、人が近づいたら搭載されたセンサが働いて電源がオンになることで利用可能になります。実験当初は、センサの感度が良すぎてただ近くを歩く人まで感知してしまったり、動作に必要な電力量を適切に供給できなかったりといくつか課題が見られましたが、現地で調整を行うことで解決しました。その後の運用や評価研究のために、研究者は継続して直接バス停に行き、利用者数やバス停の動作状況などを観察しています。
技術は完成、現実の運用は?
結果として運用可能なノーマリオフ知的バス停は完成しましたが、実際の運用となると設置コストを含めて自治体などとの連携が必要になります。その部分が、今後の課題になっていると言えるでしょう。
ただ、この新しいシステムは従来よりも省電力化されるというメリットだけでなく、需要に応じて走るために無駄がありません。将来的に活用されるようになれば人の行き来も増えて、過疎化した地域の活性化にも貢献すると予測されます。もしいずれかの自治体で試験運用、本格運用が実現すれば、過疎地問題解決の一つの手段になり得ると期待できるのです。
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