自白と黙秘、囚人はどっちが得? ゲーム理論入門
「ゲーム」と言ってもちょっと違う?
ゲーム理論というと、きっと「テレビゲームに関することだろう」と思うでしょう。しかしここでいうゲーム理論とは、もともとは経済学から発展した「利害対立の状態からいかに協調性を見いだしていくか?」といった問題を考える学問のことです。では、私たちが「ゲーム」と呼んでいるものとは全く関係ないのかといえば、そうでもありません。複数人でプレーするオンラインゲームや対人ゲームなどはその対象になります。
囚人たちが得をするには?
ゲーム理論の代表的な例に「囚人のジレンマ」があります。銀行強盗で2人の容疑者が捕まり警察は2人を個別に尋問します。このとき囚人の選択肢は「自白」か「黙秘」です。共に黙秘すれば釈放され、共に自白すれば収監されます。しかし1人が自白し1人が黙秘すれば、自白した方は情状酌量、黙秘した方が重い刑を受けます。双方にとって最良なのは「共に黙秘」ですが、相手がどちらを選択するかわからない状況では、もし相手が自白し自分が黙秘すると自分だけ重罪を受けてしまいます。さてどうしたらよいでしょうか?
これをゲーム理論で考えると、互いが自分の利益を優先することになり、結果は「両方とも自白する」になります。このように、それぞれが利己的なままでは誰も得をしない場合に、何らかのルールを作り協調(共に黙秘)を導く方法を考えるのが「ゲーム理論」なのです。
知らないうちに使っているゲーム理論
この理論は私たちの身近な場面でも使われ、人付き合いや社会生活を円滑に進めるため、気づかないうちに利用しています。また、ゲーム理論から1歩進んだ「量子ゲーム理論」というものもあります。これは「イエスかノーかではなくイエスでありノーである」「全員の選択肢を連動させる」という量子力学の考え方を使えば、双方が黙秘するという選択ができるというものです。ゲーム理論は複雑な人間社会をひもとく考え方としてさまざまな分野で応用されています。
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先生情報 / 大学情報
公立はこだて未来大学 システム情報科学部 複雑系知能学科 教授 川越 敏司 先生
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